頭痛の受診先は、痛む場所より発症の速さと伴う症状で決める。突然の激痛や片側の脱力、ろれつ・意識・視覚の急な異常があれば、診療科を探す前に119番を優先する。こうした兆候がなく、頭痛を繰り返す、頻度が増える、痛み方が変わった場合は、脳神経内科や頭痛専門外来が受診の起点になる。
日本頭痛学会は、未経験のひどい頭痛、突発して短時間でピークに達する頭痛、発熱、手足の麻痺・しびれを伴う場合は至急受診する必要があるとし、同じような頭痛を繰り返す場合の受診先には脳神経内科、頭痛専門外来、脳神経外科を挙げている。眼の奥の痛みも頭痛として扱われるため、痛む場所だけで診療科や原因を決めない。
突然の激痛・片側の脱力・意識異常は119番
厚生労働省は、突然の激しい頭痛、突然の高熱、支えなしで立てないほどの急なふらつき、顔半分の動かしにくさ・しびれ、ろれつが回らない状態、急な視野狭窄・複視、突然の片腕・片脚の脱力やしびれ、意識の異常、止まらないけいれんを119番の目安に挙げている。一つでも当てはまれば本人が運転せず、救急車を呼ぶ。
発熱に首の後ろのこわばり、意識の低下、けいれんが重なる頭痛も、迅速な救急評価が要る。日本神経学会、日本頭痛学会、日本神経治療学会の「頭痛の診療ガイドライン2021」は、発熱を含む全身症状、項部硬直、意識低下、神経症状、突然発症を二次性頭痛のレッドフラッグに挙げ、感染症による頭痛には迅速な診断・治療を要する救急疾患が含まれるとしている。症状が全部そろうまで待たない。
明らかな119番の兆候はないが、夜間や休日に救急車を呼ぶか、今すぐ受診するかの判断に迷う場合は、実施地域の救急安心センター♯7119へ相談する。総務省消防庁によると、♯7119では医師、看護師、救急救命士が受診と救急要請を助言し、緊急性が高い時は119番への転送やかけ直しを案内するが、実施地域と受付時間は一律ではない。
反復する頭痛は脳神経内科・頭痛専門外来へ
救急徴候がなく、以前から似た頭痛を繰り返す、仕事や学業に支障が出る、鎮痛薬を使う日が増えた場合は、脳神経内科または頭痛専門外来へ相談する。数週間のうちに悪化する、発作の頻度や痛み方が変わる、新しい随伴症状が出た場合も受診を先延ばしにしない。日本頭痛学会は脳神経外科も受診先に挙げており、検査や手術の要否に応じて診療科間で連携する。
ただし、頭痛の初診窓口を全国一律に一科へ定めた国内の公的資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。病院によって頭痛外来の所属や受け付ける診療科は異なる。厚生労働省は、全国の医療機関を診療科目、診療時間、対応可能な疾患・治療内容などで検索する「医療情報ネット(ナビイ)」を案内している。予約前に頭痛を診療するか電話で確認する。
目の急な変化は眼科、続く鼻症状は耳鼻咽喉科
目の奥や眼球の痛み、充血、かすみ、視力低下が主な症状なら眼科へ連絡する。特に突然の視力低下や強い眼痛、霧がかかった見え方、吐き気を伴う眼痛は、通常の予約日まで待たない。日本眼科医会の2026年版ハンドブックは、眼痛や霧視では急性閉塞隅角緑内障の危険があるとして早急な眼科受診を求め、突然の視力低下・眼痛も直ちに受診する症状に挙げている。一方、頭痛とともに急な複視、視野の欠け、片側の脱力やろれつの異常が出た場合は、外来眼科を探さず119番を優先する。
鼻づまり、粘りや臭いのある鼻汁、嗅覚低下に、頬・鼻の周囲・額の痛みや頭重感が重なり、症状が続く場合は耳鼻咽喉科を選ぶ。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、こうした症状を副鼻腔炎でみられる所見として挙げ、鼻症状が長引く場合の耳鼻咽喉科受診と、詳しい診断に鼻内視鏡やX線、CTを用いることを説明している。鼻症状と頭痛が同時にあるだけで、副鼻腔炎が頭痛の原因だとは確定しない。
診察前は発症時刻・痛み方・服薬を記録
日本頭痛学会は、頭痛ダイアリーに発症した日時、脈打つ・締め付けるなどの痛み方、持続時間、痛みの強さ、吐き気、光・音・匂いへの過敏、使った薬と効果、生活への影響、月経や気づいた誘因を記録するよう案内している。受診まで全項目を埋める必要はない。覚えている範囲を時系列にし、急に始まったか徐々に強くなったか、いつもの頭痛との違いも書く。
- 回数と時間:1週間・1カ月に痛んだ日数、始まった時刻、続いた時間。
- 痛みの特徴:左右と部位、急か徐々にか、痛み方、強さ、生活への影響。
- 伴う症状:吐き気、発熱、目・鼻の症状、しびれ、脱力、発話・歩行・意識の変化。
- 前後の状況:睡眠、食事、運動、咳、月経、外出や天候、頭部外傷との時間関係。
- 薬と病歴:処方薬・市販薬を使った日時と効果、持病、妊娠の可能性、過去の頭痛やけが。
お薬手帳、薬袋、服用中の市販薬が分かる記録を持参し、鎮痛薬の量や回数を変えたり、処方薬を中止したりする前に医師または薬剤師へ相談する。医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、処方薬の用量変更や中止を自己判断で行わず、複数の医療機関や薬局を利用する時は市販薬を含む使用中の薬をすべて伝えるよう示している。
小児・妊婦・持病や常用薬がある人
小児。 成人の外来振り分けをそのまま使わない。日本小児科学会の「こどもの救急」は、頭痛がある子どもがぐったりしている、けいれんしている、意識がおかしい場合は救急車を呼び、ろれつが回らない、手足の麻痺、正常に歩けない場合は直ちに医療機関を受診するよう案内している。厚生労働省は、明らかな救急徴候がなく、休日・夜間に対応や受診先の判断へ迷う場合、全国共通の小児救急電話相談♯8000で小児科医師・看護師へ相談できると案内している。
妊婦・妊娠の可能性がある人。 妊娠中の未経験の頭痛、ろれつの異常、手足の動かしにくさ、見えにくさを普段の頭痛と決めつけない。日本産科婦人科学会は、こうした症状に気づいた場合はすぐ産婦人科へ連絡するよう求めている。119番の兆候があれば産婦人科からの返答を待たず救急要請する。厚生労働省は、妊娠中に使えない薬がある一方で継続が必要な薬もあるため、市販薬を新たに使ったり、処方薬を中断したりする前に医師または薬剤師へ相談するよう案内している。
持病・常用薬がある人。 高血圧、がん、免疫に関わる病気、過去の脳血管疾患、眼疾患がある人や、薬を変更した後に頭痛が始まった人は、病名、薬名、変更日を受診先へ伝える。持病があるという理由だけで全員が救急対象になるわけではないが、一般的な頭痛の経過と同じだと本人だけで判断せず、担当医の連絡基準を優先する。
よくある質問
頭痛を繰り返す時、最初に何科を受診するのか
119番の兆候がなければ、脳神経内科または頭痛専門外来が候補になる。医療機関によっては脳神経外科が頭痛を診療するため、予約前に受け付ける科を確認する。
目や鼻の症状があれば脳神経内科以外でよいのか
強い眼痛、充血、かすみ、視力低下が中心なら眼科、鼻づまり、粘性の鼻汁、嗅覚低下、頬や額の痛みが続くなら耳鼻咽喉科が候補になる。急な複視・視野異常に片側の脱力やろれつの異常が重なれば119番を優先する。
診察前に最低限何を記録するのか
始まった日時、急か徐々にか、持続時間、痛む場所と痛み方、伴う症状、使った薬と効果を記録する。持病、妊娠の可能性、頭部外傷、普段と違う点も受診先へ伝える。
出典・参考資料
- こんな時は迷わず119へ(厚生労働省)突然の激しい頭痛、突然の高熱、片側の脱力・しびれ、ろれつや視覚、意識の異常など119番を急ぐ兆候
- 頭痛とは/頭痛がおこったら/頭痛の分類(日本頭痛学会)至急受診する頭痛と、反復性頭痛の受診先として脳神経内科・頭痛専門外来・脳神経外科を案内
- 頭痛の診療ガイドライン2021(日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会)発熱、項部硬直、意識低下、神経症状、突然発症など二次性頭痛を疑うレッドフラッグと頭痛ダイアリーの位置付け
- はたらく人の目を守る眼科検診ハンドブック Q&A(日本眼科医会)眼痛・霧視、突然の視力低下・眼痛、複視で早急な眼科受診を考える基準
- 鼻の病気(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)副鼻腔炎でみられる鼻・顔面症状、耳鼻咽喉科受診と鼻内視鏡・画像検査の位置付け
- 頭痛ダイアリーで頭痛を攻略(日本頭痛学会)発症日時、性状、持続時間、随伴症状、服薬と効果、生活への影響、誘因の記録方法
- こどもの救急―頭痛(日本小児科学会)小児の頭痛で救急車または直ちに医療機関を選ぶ意識、けいれん、麻痺、発話・歩行の異常
- 子どもの症状は♯8000(厚生労働省)休日・夜間に小児科医師・看護師へ受診の要否と受診先を相談する全国共通短縮番号
- 妊娠高血圧症候群(日本産科婦人科学会)妊娠中の未経験の頭痛、ろれつ、手足や見え方の異常で産婦人科へ直ちに連絡する目安
- 妊娠と薬(厚生労働省)妊娠中または妊娠の可能性がある人が医薬品を始める・中断する際の相談原則
- 医師から処方されたくすりを使用する場合の注意(医薬品医療機器総合機構)処方薬の自己調整を避け、処方薬と市販薬を含む使用中の薬を医療者へ伝える原則
- 医療情報ネット(ナビイ)の使い方(厚生労働省)診療科目、診療時間、対応可能な疾患などから全国の医療機関を探す方法
- 救急安心センター事業(♯7119)ってナニ?(総務省消防庁)救急要請や受診の判断に迷う場合の相談内容、実施地域と受付時間