連続グルコース測定(Continuous Glucose Monitoring、CGM)に、食事の写真から食後の変化を予測する生成AIが加わった。米アボットが2026年1月5日に発表した「Libre Assist」は、食べる前に食事を撮影するか文章で入力すると、グルコースへの影響を3段階で示す機能だ。ただし発表の対象は米国であり、日本で同じ機能が使えることを示す国内の公式資料は確認できていない。

食前に予測し、食後の実測値と照合

アボットの発表によると、Libre Assistは食事の写真または文章から食材を認識し、グルコースへの影響を小さい順に緑、黄、オレンジで表示する。生成AIを使い、米国の糖尿病患者向けにLibreアプリ内で追加料金なく提供する機能としてCES 2026で公表された

処理は食前の予測だけで終わらない。食後はアボットのCGMセンサーから得たおよそ3時間分のデータを取り込み、実際のグルコースへの影響を記録する。予測値は利用者が入力した食事情報にもとづき、実際の変化は運動、ストレス、薬剤、飲酒などにも左右されるとアボットは説明している。予測と実測を同じ画面で往復させるところが、食事記録だけのアプリとの違いになる。

スマートフォンに食事の写真とグルコースへの影響予測が表示された画面(イメージ)

一方、AIが示すのは測定値そのものではなく、食事情報から導いた予測である。アボットは、生成AIが常に正確とは限らず、治療判断には使わないよう注意書きを置く。公開された説明には、長期の精度や実際の診療での有用性を検証した大規模な臨床データは示されていない。

日本の現行製品はFreeStyleリブレ2

日本での製品構成は米国と同じではない。アボットの日本向けサイトが案内するFreeStyleリブレ2は、上腕のセンサーでグルコース値を1分ごとに測定し、低値と高値のアラートを備える。センサーの装着期間は最長14日である。日本語の製品ページにはLibre Assistの案内がなく、同機能と組み合わせて米国で訴求されるFreeStyle Libre 3 Plusについても、国内の承認や提供開始を裏づける公式資料は本稿執筆時点で確認できていない。

グルコース測定用センサーの箱に記載された製品番号を確認する薬剤師(イメージ)

ここで区別が要るのは、センサーが測る層と、アプリが予測する層だ。FreeStyleリブレ2の中核はセンサーによる連続測定とアラートであり、Libre Assistは食事の画像や文章を解析する別のソフトウェア機能である。国内でCGMを利用できることから、米国向けAI機能も同時に使えるとは限らない。

保険算定の外にも選定療養

日本では機器の販売と公的医療保険の算定も別の問題になる。厚生労働省の診療報酬で、間歇スキャン式持続血糖測定器を対象とする血糖自己測定器加算は1250点で、インスリン製剤を1日1回以上自己注射する外来患者への指導に用いた場合が算定対象になる。糖尿病の病型だけで一律に決まる仕組みではなく、治療内容が要件に入っている。

算定要件から外れる患者については、間歇スキャン式持続血糖測定器を選定療養として使う道がある。選定療養は、患者が特別料金を負担し、保険外の部分と通常の保険診療を併用する制度である。CGMが国内で流通していても、利用者全員が同じ条件で給付を受けるわけではない。さらにLibre Assistのようなアプリ機能が国内の診療報酬で別に評価されていることを示す資料も確認できていない。

診察室で医師と持続グルコース測定器について話す患者(イメージ)

センサー回収とAI機能は切り分ける

Libre Assistと組み合わせて米国で案内されるセンサーには、安全面の経緯もある。米食品医薬品局(FDA)が2026年1月15日に掲載した企業告知では、一部のFreeStyle Libre 3とLibre 3 Plusが誤って低い値を示す恐れがあり、米国内の約300万個が是正措置の対象になった。世界で関連する可能性のある重篤な有害事象736件と死亡7件が報告された

対象は一つの製造ラインで作られた一部のセンサーで、アボットは原因を特定して解消したとしている。FDAの掲載情報は、リーダーとモバイルアプリ、FreeStyleリブレ2を含む他のLibre製品は対象外だと明記する。これはLibre Assistの生成AIが誤った予測を出した事案ではなく、センサーの製造工程に起因する問題だった。AI機能の評価、国内承認の有無、センサーの安全情報は、同じブランド名でも別々に確認する必要がある。

国内で残る情報の空白

Libre Assistは、生成AIをCGMの測定データと結びつけた具体的な製品機能である。ただし、日本の読者にとって焦点になるのは米国での機能紹介より、国内版アプリへの搭載時期、対応センサーの承認、費用負担、臨床上の検証だ。この4点を示す日本語の公式資料は確認できていない。現時点で確かめられるのは、日本向け製品がFreeStyleリブレ2を中心に案内され、保険算定には治療内容による要件があり、対象外には選定療養が用意されているところまでである。