夏休み中に人の目が届きにくかった校庭やベランダでは、小さな水たまりがヒトスジシマカの発生源になりうる。学校と家庭が容器や排水設備を定期的に点検し、屋外では肌の露出と蚊の接触を減らすことが対策の軸となる。

日本で対策の中心となるのはヒトスジシマカだ。厚生労働省によると、主な媒介蚊のネッタイシマカは国内に常在しない一方、媒介能力を持つヒトスジシマカは本州以南のほとんどの地域に生息する。日中の屋外で活発に吸血し、活動範囲はおおむね50〜100メートルとされるため、一つの家や教室だけを見ても発生源は絞れない。

発熱や出血──受診を急ぐ状況

海外の流行地から戻った後や蚊に刺された数日後に、高熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、発疹が出た場合は、早めに医療機関へ連絡して受診する。 渡航先、滞在期間、蚊に刺された可能性を医師へ伝える。厚生労働省は、デング熱では急な発熱、発疹、頭痛、骨関節痛、吐き気や嘔吐がみられ、一部は重症デングへ進むため早期受診が必要だとしている

水分が取れない、鼻や歯ぐきから出血する、血便が出る、強い腹痛や立ちくらみがある、熱が下がり始めたのに呼吸が苦しい場合は、まず電話した上ですぐに受診する。 国立健康危機管理研究機構の患者向け資料は、これらを診察後も直ちに再受診する症状として挙げている厚生労働省の救急案内が示すように、意識がない、呼吸が弱い、大量に出血している場合は119番を急ぐ

乳幼児は頭痛や息苦しさを言葉で伝えにくい。妊娠中の人、高齢者、糖尿病や腎臓病などの持病がある人、常用薬がある人も、成人一般の様子見をそのまま当てはめず、発熱時は早めに医師へ相談する。

発生源──少量の水を容器ごとに確認

ヒトスジシマカは池のような広い水面を必要としない。国立健康危機管理研究機構は、空き缶、食品容器、植木鉢の受け皿、雨水ます、古タイヤなど、身の回りの小さな水たまりを幼虫の発生源に挙げている。乾いたように見える期間があっても、卵は乾燥状態で数カ月生きる場合がある。

学校では植木鉢の受け皿、雨ざらしの清掃用具、用具倉庫の外にある容器、ブルーシートのたるみ、詰まった側溝や雨水ますを確認する。家庭ではベランダ、庭、駐輪場、物置の周囲を歩き、空き容器は処分し、残す容器は水を捨てて清掃した後、伏せるか屋内へ移す。

JIHSの解説は、植木鉢の受け皿からバケツ、排水溝、雨水ます、ビニールカバーのくぼみまで、容量や形の異なる場所で幼虫が発生すると説明する。排水できない雨水ますや大きな設備は、児童や住民が薬剤を入れず、施設管理者が位置を記録して点検と必要な防除を担う。

学校の点検──担当と記録を決める

始業前の一斉清掃だけで終わらせず、降雨後を含む定期点検へつなげる。校庭、花壇、屋上、駐輪場、倉庫周辺、排水設備を区域に分け、確認日、滞水の有無、処置、再確認日を記録する。児童が入りにくい屋上や排水設備は教職員や施設管理者が確認する。

厚生労働省の啓発資料は、公園、学校、寺社、空港、港、駅の管理者に対し、幼虫が発生しそうな水たまりの定期的な除去・清掃と下草刈りを求めている。ただし、学校向けに全国一律の点検頻度や様式を示した公的チェックリストは、本稿の執筆時点で確認できていない。地域の発生状況と施設の構造に応じ、学校医、自治体の保健部門、施設管理担当と点検間隔を決める必要がある。

屋外での防護──服装と虫よけ剤

草むらや木陰で活動する日は、長袖と長ズボンで露出する皮膚を減らす。厚生労働省は、国内でディート(DEET)またはイカリジンを有効成分とする虫よけ剤が市販され、雨や汗で持続性が下がるため製品の用法、使用量、再使用の間隔を守るよう案内している

成分名だけを見て子どもへ成人と同じ使い方をしない。厚生労働省の高濃度製剤に関するQ&Aでは、ディート製剤は12歳未満に使わず、イカリジン製剤を子どもへ使う場合は保護者が噴霧を吸わせないよう扱うか、いったん手に取って塗る注意表示を求めている。濃度と製品で注意事項が変わるため、対象年齢と使用回数を表示で確かめる。使用後に異常が出た場合は洗い流し、製品を持って医療機関へ相談する。

対策の効果を読み違えない

水たまりの除去は、デング熱の発症を個人単位で保証する措置ではない。家庭とその周辺の媒介蚊対策61研究をまとめた2023年の系統的レビューでは、発生源除去だけを調べた7研究のうち4研究で幼虫・蛹の指標が有意に低下したが、3研究は低下傾向にとどまった。研究地域、住環境、介入の継続性が異なるため、日本の学校で同じ効果量が得られるとは限らない。

それでも、不要な水をためないことは日本の公的対策の基礎に置かれている。校内と家庭の点検記録を続け、自治体から国内感染例や注意喚起が出た場合は、平常時の清掃に加えて保健当局の指示に従う。

よくある質問

植木鉢がなければ点検は不要か
不要とはならない。空き缶、ペットボトル、バケツ、雨水ます、排水溝、ブルーシートのたるみなど、水が残るくぼみ全体を確認する。

雨が降った日の一度だけでよいか
一度では足りない。見落とした場所や排水できない設備もあるため、担当者と次の確認日を決めて定期点検にする。全国一律の頻度ではなく、降雨と施設の状態に合わせる。

虫よけ剤は濃度が高いほどよいか
濃度だけでは選ばない。対象年齢、使用できる部位、1日の使用回数、再使用の間隔が製品で異なるため、購入時と使用前に表示を確認する。

自宅だけを清掃すれば十分か
発生源は敷地の外にもありうる。私有地へ無断で入らず、共同住宅の共用部は管理者へ、道路や公園の排水設備は自治体の担当窓口へ連絡する。