イエメンの反政府武装組織ホーシー派(正式名称アンサール・アッラー)は8月6日、中部マアリブ県と東部ハドラマウト県にある政府軍の拠点を弾道ミサイルと無人機で攻撃した。AP通信はイエメン当局者の話として、政府軍兵士が少なくとも30人死亡し、50人が負傷したと報じた。2022年の国連仲介停戦以降、抑えられてきた大規模戦闘が再燃する懸念が強まっている。

マアリブ、ハドラマウトの政府軍拠点を攻撃

ホーシー派の軍事報道官ヤヒヤ・サリー氏は、両県の軍事拠点を攻撃したと認めた。標的は国際的に承認されたイエメン政府に属し、サウジアラビアが支援する部隊の宿営地だった。サリー氏は、弾道ミサイルと無人機を使い、イエメン東部で進むサウジ支援部隊の集結に対抗したと説明した。

イエメン軍は死傷者が出たことを公表したが、人数は示していない。30人死亡、50人負傷という初報は、報道機関に匿名で話したイエメン当局者に基づく。一方、サリー氏は死傷者が「数百人」に上ると主張した。双方の数字を裏付ける独立した集計は確認されておらず、規模には大きな幅がある。

ミサイル攻撃を受けた軍事拠点に残る車両とがれき(イメージ)

サウジ南部でも民間人11人が負傷

攻撃はイエメン国内にとどまらなかった。サウジ軍のトルキ・マルキ報道官は、イエメン国境に近いナジュラーン州への一連の攻撃で、4歳児を含む民間人11人が負傷したと発表した。内訳はサウジ人7人、イエメン人1人、エジプト人2人、パキスタン人1人だった。AP通信によると、ホーシー派はこの越境攻撃について声明を出していない。

翌7日も攻撃は続いた。スペイン紙El Paísはイエメン国営テレビの情報として、マアリブ県ハリブ地区への新たな攻撃で政府軍兵士3人が死亡し、4人が負傷したと報じた。初日の死傷者に追加される数字かどうかを含め、全体像は固まっていない。

2022年停戦後の沈静化に打撃

イエメン内戦は、ホーシー派が2014年に首都サヌアを掌握したことで本格化した。国際的に承認された政府を支えるサウジ主導の連合軍は2015年に軍事介入し、戦闘は長期の膠着状態に入った。イランの支援を受けるホーシー派、イエメン政府、周辺国の利害が重なり、対立の構図は複雑だ。

国連の仲介で2022年4月に始まった停戦は同年10月に失効したものの、大規模な戦闘の抑制はその後も続いた。日本の外務省は2026年6月25日付の危険情報で、本格的な戦闘は一時的に止まっている一方、停戦合意は失効しており、イエメンでの戦闘再開やホーシー派による越境攻撃の可能性は排除できないと説明していた。今回の攻撃は、その警戒が現実のものとなった形だ。

死傷者数の確定には時間

戦場への取材アクセスが限られ、政府軍とホーシー派がそれぞれ軍事上の利害を持つため、発表値はそのまま比較できない。現段階で確認できるのは、イエメン側の匿名当局者による30人死亡、50人負傷という説明、人数を示さないイエメン軍発表、そして「数百人」とするホーシー派の主張である。確定値には医療機関や部隊名簿などを通じた追加確認が要る。

日本政府が今回の死傷者数を独自に確認した資料も、本稿の執筆時点では見当たらない。外務省はナジュラーン州を渡航中止勧告の対象としているが、この危険情報は今回の攻撃より前の6月25日付だ。戦況と渡航情報は更新時点を分けて読む必要がある。

よくある質問

ホーシー派とはどのような組織か
正式名称はアンサール・アッラーで、イエメン北部を基盤とする武装・政治組織だ。2014年に首都サヌアを掌握し、現在も北部の広い地域を支配する。国際的に承認された政府と、それを支えるサウジアラビア主導の陣営に対立してきた。

2022年の停戦は現在も有効なのか
正式な停戦合意は2022年10月に失効した。その後も大規模戦闘を避ける事実上の沈静化が続いてきたが、恒久停戦や包括的な和平合意には至っていない。今回の連続攻撃が全面的な内戦再開につながるかは、現時点で判断できない。