ミュンヘン発ハノイ行きのベトナム航空VN34便は8月15日、離陸に約4,000メートルの滑走路の大半を使い、機体後部を地面に接触させた。ボーイング787-9(登録記号VN-A867)は上昇後にミュンヘン周辺を旋回し、同空港へ戻った。

初期報道では、機体は滑走路26Lの終端近くで離陸し、待機飛行と低空通過を経て滑走路26Rへ着陸した。複数のタイヤが損傷し、乗客・乗員に負傷があったとの報告は出ていない。一方、運航会社や調査機関の公式資料は確認できていない。映像と飛行追跡データを基にした初報と、確定した調査結果を分けて読む必要がある。

約2時間の帰投──二度の低空通過後に着陸

VN34便は午後、滑走路26Lから離陸した。公開映像では機体が滑走路の終端近くまで地上走行を続け、離陸時に土煙が上がっている。離陸時刻は午後1時45分とする報道と午後1時57分とする報道があり、本稿では特定しない。

One Mile at a Timeは、離陸後にタイヤ圧の警告が報告され、機体が約90分にわたり周辺を旋回したと伝えた。燃料を消費したのか投棄したのかは特定せず、滑走路26Rを2回低空通過した後、3回目の進入で着陸したとしている

AIRLIVEの時系列更新も2回の低空通過を記録し、VN34便が滑走路26Rへ着陸した後に滑走路を離れ、複数のタイヤが破損した状態で誘導路上の点検を受けたと報じた。機体は離陸から約2時間後に地上へ戻ったが、タイヤが離陸時と着陸時のどちらでどこまで損傷したかは明らかでない。

空港の滑走路を走行するボーイング787型機(イメージ)
VN34便の運航機材はボーイング787-9だった。(イメージ)

テールストライク──機体後部が滑走路に接触

テールストライク(tail strike)は、離陸または着陸の際に機体後部が滑走路へ接触する事象である。SKYbraryは、離陸時の一般的な要因として不適切なトリム設定、誤って算出された機首上げ速度、過大な機首上げ率などを挙げ、機体後部に大きな構造損傷が生じる場合があると説明する

これらはテールストライク全般の要因であり、VN34便の原因を示すものではない。公開映像から確認できるのは長い離陸滑走と接触時の土煙までで、離陸重量、重心、フラップやトリム、推力設定の記録は公開されていない。機体後部の損傷範囲も公式な検査結果を待つ段階だ。

夕暮れの空港管制塔と滑走路(イメージ)
VN34便は、地上から機体の状態を確認するためと報じられた低空通過を2回行った。(イメージ)

「滑走路逸脱」は離陸時と着陸時を分ける

滑走路逸脱(runway excursion)は、航空機が離陸または着陸中に滑走路の側方へ外れるか、終端を越える事象を指す。米連邦航空局(Federal Aviation Administration、FAA)は、滑走路面からの横方向の逸脱と終端超過を滑走路逸脱と定義している

VN34便については、複数の航空メディアが離陸時に舗装面の先まで進んだと報じている。AeroCornerは、帰投着陸でも滑走路末端を越え、進入灯を損傷したと伝えた。しかし、One Mile at a Timeは機体が滑走路上で動けなくなったとし、AIRLIVEはタイヤ損傷後に滑走路を離れたとしている。初報の記述が一致しないため、二度目の滑走路逸脱は確定していない。

旅客機の主脚とタイヤの接写(イメージ)
帰投着陸では複数のタイヤが損傷したが、損傷が始まった時点は公表されていない。(イメージ)

原因は未確定──映像だけでは決められない

航空メディアは、離陸性能の計算や入力、機体設定の誤りを可能性として挙げている。いずれも過去の類似事例から導いた推測で、VN34便の運航記録に基づく結論ではない。長い離陸滑走が生じた理由を絞るには、重量と重心、速度と推力の設定、操縦操作、機体やタイヤの検査結果を突き合わせる必要がある。

欧州委員会の案内では、ドイツの民間航空事故・インシデント調査はドイツ連邦航空事故調査局(Bundesstelle für Flugunfalluntersuchung、BFU)が主導する。ただし8月16日時点で、BFUが本件の正式調査を開始したと示す公表資料は確認できていない。ベトナム航空とミュンヘン空港からも、原因、搭乗者数、損傷範囲を確定する資料は見つかっていない。

国土交通省や日本の航空会社が、本件を受けた特別な運航措置を公表した資料も確認できていない。これは日本発着便への影響がなかったとの断定ではない。

よくある質問

VN34便で負傷者は出たのか
初期報道では負傷の報告は出ていない。ただし、乗客・乗員数と負傷の有無を確定する航空会社や当局の資料は、8月16日時点で確認できていない。

帰投着陸でも滑走路を飛び出したのか
確定していない。AeroCornerは滑走路末端を越えたと報じたが、他の初期報道は滑走路上での停止またはタイヤ損傷後の離脱と記しており、公式発表も確認できていない。

長い離陸滑走の原因は何か
原因は未確定である。離陸性能の計算や機体設定を巡る説明は外部の推測で、公式な調査結果ではない。