米国の司法長官は、大統領が候補を指名し、上院の助言と同意を経て就任する。与党が上院で多数を占めても、委員会で同党議員が反対に回れば指名手続は止まりうる。トッド・ブランシュ(Todd Blanche)司法長官代行の人事は、税務訴訟の和解をめぐる共和党内の対立によって、その構図が表面化した例である。

司法委員会の採決延期、共和党1人の離反が重み

CBS Newsによると、上院司法委員会は7月30日に予定していたブランシュ氏の指名を本会議へ進める採決を延期した。共和党のジョン・コーニン上院議員とトム・ティリス上院議員が支持を確約せず、民主党委員が全員反対する状況では、共和党から1人が離反するだけで承認勧告が難しくなる

トランプ大統領は同日、ブランシュ氏を称賛する一方、両議員が「正しいこと」をしなければ指名を一時撤回し、2人が退任した後に再提出しても構わないとTruth Socialに投稿した。両議員の任期は2027年1月に終わる。コーニン氏は、和解への懸念を持つ議員は2人に限られないと反論したが、ほかに誰が反対票を投じるかは明らかにしていない。

共和党のジョン・コーニン米上院議員の公式肖像

17億7600万ドル基金と税務調査条項

対立の発端は、トランプ氏と長男、次男、関連企業が内国歳入庁(IRS)などを相手取って起こした100億ドルの民事訴訟である。元契約職員による税務情報の漏えいを理由とした訴訟の和解には、政治的な法執行の被害を訴える人に金銭などを給付する基金が盛り込まれた。

米司法省が5月18日に公表した資料は、基金の正式名称を「反武器化基金」(Anti-Weaponization Fund)とし、原資を17億7600万ドル、申請処理の終了期限を2028年12月1日としていた

議会の反発を受け、ブランシュ氏は6月3日に基金を進めないと証言した。しかし、基金を復活させないとの確約を書面にすることは拒んだ。コーニン、ティリス両氏は書面化に加え、和解に含まれる税務調査の制限を既存の調査だけに絞り、将来の申告分に対する免責ではないと明記するよう求めている。政権側は将来の税務調査を妨げる条項ではないと説明しており、文言の解釈をめぐる隔たりが残る。

連邦地裁は訴訟の目的を批判

フロリダ州南部地区連邦地裁のキャスリーン・ウィリアムズ判事は7月13日、この訴訟が法的、事実的な根拠を欠く和解に司法上の正当性を与えるという不当な目的で起こされたと判断した。裁判所は和解の条項を他の司法・行政手続で和解成立の証拠として使うことを禁じ、トランプ氏側の弁護士1人を州弁護士会へ付託し、別の1人の同地裁での活動を制限した

同判事は、和解文書に署名したブランシュ氏と司法省高官スタンリー・ウッドワード氏が所属する弁護士会にも決定を送った。これはブランシュ氏本人への懲戒決定ではない。ただし、司法省を率いる候補者が問題視された和解に直接署名していた事実は、指名審査と税務合意を切り離しにくくしている。

4月に代行就任、7月15日に指名公聴会

ブランシュ氏はトランプ氏の元個人弁護士で、2025年3月に上院の承認を受けて司法副長官に就いた。パム・ボンディ氏が2026年4月に司法長官を退任した後は長官代行を務め、トランプ氏は6月9日に正式な司法長官候補として上院へ指名を送った

上院司法委員会の記録では、ブランシュ氏の指名公聴会は7月15日に開かれた。その後の委員会採決が今回延期されたため、指名は本会議での最終採決に進んでいない。

大統領の指名権を制約する上院審査

上院司法委員会は、司法省幹部の指名について上院審査の最初の段階を担う。委員会が候補を承認勧告すれば本会議へ進むのが通常の流れだが、委員会の多数は大統領と同じ党の候補を自動的に支持する義務を負わない。

今回の争点は、候補者の経歴だけではない。共和党議員は、司法省が大統領本人との和解で設けた基金を正式に撤回し、税務調査を制限する範囲も書面で絞るよう求めている。トランプ氏が指名を維持する場合、ブランシュ氏と司法省がどの文言を受け入れるかが次の委員会採決を左右する。指名を撤回した場合も、長官代行としての職務が直ちに終わるわけではない。

よくある質問

なぜ司法長官候補の採決が延期されたのか
共和党のコーニン、ティリス両上院議員が支持を確約せず、司法省との協議がまとまらなかったためだ。民主党委員が全員反対する状況では、共和党議員1人の反対も採決結果に影響する。

両議員は何を求めているのか
17億7600万ドルの反武器化基金を復活させないとの書面確約と、トランプ氏らに関する税務調査の制限が将来の申告分に及ばないよう和解条項を明確にすることである。

トランプ氏は指名を撤回したのか
7月30日時点では撤回していない。両議員が支持しなければ一時撤回し、2人の退任後に再提出する案を示した段階である。

連邦地裁の判断で和解全体が無効になったのか
裁判所は訴訟の目的を厳しく批判し、和解条項を別の手続で和解成立の証拠として使うことを禁じた。司法委員会で争われている基金の書面撤回や税務調査条項の修正は、政治部門でなお決着していない。