英国のエド・ミリバンド外相は8月5日、ワシントンでマルコ・ルビオ米国務長官と会談した。米国務省の発表を伝えたロイターによると、両氏は欧州が自らの安全保障でより大きな役割を担う必要性を協議し、ウクライナへの関与や北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty Organization、NATO)を巡る立場を確認した。
ミリバンド氏は会談後、米国を英国の「最も緊密な同盟国」と呼び、協議は温かく生産的だったと説明した。一方、記者からトランプ大統領を過去に「愚か者」「人種差別主義者」「女性蔑視者」と評したことを問われると、旧発言は当日の会談で取り上げられなかったと答え、現在の評価は示さなかった。
旧発言は外相就任前から米側との懸案になっていた。PA通信を引用した英紙ガーディアンによると、ミリバンド氏は2016年にトランプ氏を「人種差別主義者で女性蔑視者、自ら認めた痴漢」と批判し、後に「愚かさの水準を引き下げた」とも発言した。ウォーレン・スティーブンス米駐英大使は7月23日、当時の発言は誤りだったと述べ、見方が変わったことを望むと語った。
就任16日後の訪米、米国とEUの両方を重視
英国政府の公式略歴によると、ミリバンド氏は7月20日に外相へ就任し、それまで約2年間はエネルギー安全保障・ネットゼロ相を務めた。今回の会談は就任から16日後に当たり、7月にマニラでルビオ氏と短時間接触したのに続く2回目の対面となった。
ミリバンド氏は就任時から、米国との関係を欧州との関係の代替とは位置づけていない。7月20日の就任声明では、米国との「強固で永続的かつ不可欠な同盟」を育てると同時に、欧州連合(European Union、EU)との戦略的同盟を深める方針を示した。ウクライナ支援、イランでの戦闘終結、ホルムズ海峡の全面再開、パレスチナとイスラエルの持続的和平も優先課題に挙げた。
そのため今回の協議では、英米関係の呼び名より、安全保障上の役割分担が前面に出た。米国務省側は、欧州が自らの安全を一段と担う必要性を強調した。英国側は、ウクライナの安全が欧州と大西洋を挟む同盟全体の安全から切り離せないとの立場を示した。
ホルムズ海峡──安全航行と英国の生活費
中東では、ホルムズ海峡の安全な通航とイランの核問題が共通議題となった。ロイターが伝えた米国務省の説明では、両氏は海峡の安全航行を確保し、イランによる核兵器の開発・取得を阻止する方針を改めて確認した。ミリバンド氏は訪米前、海峡の再開が英国の生活費負担を和らげるうえで重要だと述べ、ガザの深刻な人道状況も取り上げる考えを示していた。
海峡を巡る方針は、今回初めて示されたものではない。英国を含む各国首脳は6月の共同声明で、ホルムズ海峡の無条件かつ制限のない航行再開が不可欠だとし、商船の安全確保と機雷除去を目的とする防御的な任務への関与を掲げた。イランが核兵器を保有してはならないとの方針も明記した。8月5日の外相会談は、この合意の履行を英米間で確認する場でもあった。
「特殊関係」より公表された議題を読む
英側当局者は会談を「温かく生産的」と評し、両外相が今後数週間から数カ月にわたり緊密に連絡を取ることで一致したと説明した。これに対し、ロイターが引用した米国務省の発表は「特殊関係」や「最も緊密な同盟国」という表現を使わず、欧州の安全保障負担、ウクライナ、ホルムズ海峡、イランの核問題を列挙した。
表現の違いだけで英米関係の悪化を断定する材料にはならない。公表資料から読み取れるのは、英国が歴史的な同盟関係を強調し、米国が具体的な負担と政策課題を前面に置いたことだ。会談の全文記録は公表されておらず、ウクライナ向け防空支援やガザを巡って新たな合意があったかは明らかでない。
ミリバンド氏はワシントン滞在中、世界銀行のアジェイ・バンガ総裁とも会う予定とされた。英国政府は7月27日、同氏が世界銀行の英国総務に就き、国際開発と気候金融への関与を主導すると発表している。対米協議と多国間開発金融を一度の訪問で扱った日程は、新外相が安全保障と開発政策を同じ外交課題として進める姿勢を映す。
よくある質問
ミリバンド外相とルビオ国務長官は何を協議したのか
欧州の安全保障負担、ウクライナ支援、ホルムズ海峡の安全航行、イランの核問題が中心だった。英国側はガザの人道状況も提起する方針を事前に示していた。
ミリバンド氏はトランプ大統領への過去の批判を撤回したのか
撤回したとは述べていない。記者の質問に対し、旧発言は当日の会談では取り上げられなかったと答え、現在の評価を明らかにしなかった。
米国務省も英米の「特殊関係」を強調したのか
公表された説明では、その表現は確認できない。米側は欧州の防衛負担やウクライナ、ホルムズ海峡、イランの核問題を具体的な協議事項として挙げた。
ミリバンド氏はいつ英国外相に就任したのか
2026年7月20日に就任した。それ以前はエネルギー安全保障・ネットゼロ相を務めていた。
出典・参考資料
- Rubio and Miliband discuss Ukraine war, boosting Europe's role in its own security(Reuters/Global Banking & Finance Review)8月5日の会談日程、欧州の防衛負担、ウクライナ、ホルムズ海峡、イランを巡る協議を報じたロイター配信
- Top US diplomat says Miliband was wrong to call Trump a racist, misogynistic self-confessed groper(The Guardian/PA)ミリバンド氏の2016年の発言と、スティーブンス米駐英大使の反応を伝えた
- Statement from Ed Miliband on his appointment as Foreign Secretary(英国政府)米国、EU、ウクライナ、イラン、ホルムズ海峡、ガザを巡る就任時の外交方針
- The Rt Hon Ed Miliband MP(英国政府)2026年7月20日の外相就任と、それ以前の役職を確認した公式略歴
- Joint E4 Leaders’ Statement on the US-Iran peace deal: 14 June 2026(英国政府)ホルムズ海峡の航行再開とイランの核兵器保有阻止に関する共同声明
- UK strengthens commitment to global development as Foreign Secretary becomes UK Governor to the World Bank(英国政府)ミリバンド外相の世界銀行英国総務就任と、開発・気候金融を巡る役割
- Official portrait of Secretary Marco Rubio(Wikimedia Commons/U.S. Department of State)表紙画像の被写体、撮影日、作者、パブリックドメイン表示