国際安定化部隊(International Stabilization Force、ISF)は、停戦後のガザで治安維持や武装解除の支援を担う暫定的な多国籍部隊だ。ウガンダ議会は8月6日、同国軍の派遣を認める動議を可決した。部隊を出すと表明した国は増えたものの、ウガンダ側の派遣人数や時期、任務の詳細は明らかになっていない。
ウガンダ議会の判断──ソマリア派遣の経験を根拠に
AP通信によると、キリョワ・キワヌカ国防相が動議を提出し、ウガンダ軍がソマリアなどの平和維持活動で培った能力を派兵の根拠に挙げた。議会は動議を承認したが、採決の内訳は報じられていない。今回の承認は、ウガンダ政府がISFへの参加意思を公に示した最初の動きとなる。
議会内には異論もあった。反対派のハサン・キルミラ議員は、イスラム協力機構(Organization of Islamic Cooperation、OIC)加盟国であるウガンダに「外交上の懸念」が生じると指摘し、「われわれの軍はどちらの側で戦うのか」と問いただした。派兵を決めた理由や、見返りを伴う合意の有無も公表されていない。
国連が授権、指揮は米国
国連安保理が2025年11月17日に採択した決議第2803号は、和平評議会に対し、統一指揮下の暫定的なISFをガザに設ける権限を与えた。採決は賛成13、反対0、棄権2で、部隊はガザの治安安定、非武装化、武器廃棄を支援する。安保理の授権を受けるが、国連が直接指揮する通常の国連平和維持活動とは異なる枠組みである。
2月の和平評議会会合では、インドネシア、モロッコ、カザフスタン、コソボ、アルバニアが兵力拠出を表明し、エジプトとヨルダンは警察訓練への協力を約束した。司令官に就いた米軍のジャスパー・ジェファーズ少将が示した計画は兵士2万人、警察要員1万2000人の規模だった。ウガンダは、この5か国に続いて議会承認まで進めた。
2万人構想と実働部隊の隔たり
派兵の約束は、そのまま現地展開を意味しない。AP通信は5月末、当初表明した5か国から大規模な兵力拠出がなく、インドネシアの8000人派遣計画も期限を定めず保留されたと報じた。カザフスタンは野戦病院を含む人道分野に役割を限り、アルバニアとコソボが検討した人数も小規模だった。ウガンダの参加承認だけで2万人構想の実現性が大きく高まったとは判断できない。
活動開始には停戦の次段階が要る。ハマスの武装解除とイスラエル軍の段階的撤収を進め、その動きと連動してISFを展開する設計だからだ。イスラエル首相府報道官は8月、米国が仲介した武装解除案に「重大な安全保障上の懸念」があるとAP通信に述べ、ハマスが実際に武器を放棄する前にイスラエル軍を撤収させない考えを示した。武装解除、撤収、国際部隊の展開は相互に条件となり、どれか一つが止まれば全体が遅れる。
日本の関与は暫定統治への人材派遣方針
日本政府は決議第2803号の採択を歓迎し、ガザの人道状況の改善と復旧・復興に加え、暫定的な統治機構への人材派遣を通じて関与する方針を示している。これはISFへの自衛隊員や警察要員の派遣表明ではない。ISFに日本から要員を送る決定を示す外務省や内閣官房の公表資料は、本稿執筆時点で確認できていない。
よくある質問
ISFは国連のPKOなのか
国連安保理決議の授権を受けるが、国連が直接指揮する通常のPKOではない。決議は和平評議会に対し、同評議会が受け入れ可能な統一指揮下で部隊を設ける権限を与えた。
ウガンダ軍はいつ、何人がガザへ向かうのか
議会承認は済んだが、人数と派遣時期は公表されていない。停戦の次段階と部隊編成の進捗にも左右される。
ISFの兵力はすでに2万人に達したのか
達していない。2万人はジェファーズ少将が示した計画上の規模で、各国の拠出人数や展開日は固まっていない。
出典・参考資料
- Lawmakers in Uganda approve sending troops for international force in Gaza(Associated Press)ウガンダ議会の派兵承認、防衛相と反対派議員の発言、派遣人数と時期が明らかでない点を報じた現地発の記事
- UN Security Council authorizes temporary international force for Gaza(United Nations)決議第2803号の採決結果、暫定的な国際安定化部隊の設置権限、統一指揮と非武装化支援の任務を説明した国連記事
- Trump gets pledges for Gaza reconstruction and troop commitments at inaugural Board of Peace talks(Associated Press)5か国の派兵表明と兵士2万人・警察要員1万2000人という計画規模を報じた記事
- Plans for the Gaza International Stabilization Force are in question as troop pledges stall(Associated Press)2026年5月時点で大規模な部隊拠出が実現せず、活動開始が武装解除と撤収に左右される状況を報じた記事
- Israel says it has serious concerns with Hamas disarmament deal(Associated Press)ハマスの武装解除案に対するイスラエル側の安全保障上の懸念と撤収条件を報じた記事
- ガザ情勢に関する国連安全保障理事会決議第2803号の採択について(外務大臣談話)(外務省)日本政府が決議採択を歓迎し、暫定統治機構への人材派遣を含む関与方針を示した公式談話