米カリフォルニア州オークランドのカリフォルニア北部地区連邦地裁で8月18日、米メタ(Meta Platforms)を相手取った未成年者保護訴訟の冒頭陳述が始まった。29州が2023年に起こした事件のうち、カリフォルニア、コロラド、ケンタッキー、ニュージャージーの4州が先行して立証に臨んだ。AP通信は、4州の審理が約6週間続く見通しで、残る25州は後に別途審理される予定だったと報じた。
州側は、InstagramとFacebookが未成年者の長時間利用を促すよう設計され、Metaが危険性を十分に開示しなかったと主張した。Metaは訴えを否定し、安全対策を重ねてきたと反論した。本稿は、元Meta技術部門責任者の証言が出た8月21日までの審理状況を扱う。
州側の主張──設計と13歳未満のデータ収集
カリフォルニア州司法省は、Metaが若年利用者の過度な使用を促す機能を設計し、13歳未満のデータを違法に収集・利用したうえ、FacebookとInstagramの安全性について利用者や家族に誤解を与えた、という州側の主張を示した。州側が挙げた法令には、米児童オンラインプライバシー保護法(Children's Online Privacy Protection Act、COPPA)、カリフォルニア州の虚偽広告法と不正競争法が含まれる。
争点は投稿内容そのものより、利用を促す製品設計と会社側の説明に置かれた。州側は、無限スクロール、推薦機能、写真フィルター、「いいね」などが未成年者の継続利用を促し、利用時間の増加が広告収入につながる構造だったと主張した。13歳未満の個人データを保護者の同意なく集めたとするCOPPA違反の主張も審理対象となった。
ベハール証言──利用時間と利用者数を評価軸に
アルトゥーロ・ベハール(Arturo Béjar)は、2009年から2015年までFacebookでネット上のいじめ対策に携わり、2019年から2021年には請負の立場でMetaの安全分野に戻った。2023年には米議会でInstagramと青少年保護について証言している。
ベハールは8月19日の法廷で、Instagramが13歳未満の利用者を積極的に把握しない姿勢を取っていたと述べた。製品担当者の業績評価と報酬は主に利用者数と利用時間を基準とし、安全は後回しになったとの証言である。
AP通信によると、ベハールは自身の調査で13歳未満のInstagram利用者を数万人単位で把握したと証言し、社内では低年齢の利用者の存在が知られていた一方、疑わしいアカウントの年齢を調べる目標や指標はなかったと述べた。これは州側証人の説明であり、Metaは訴訟全体の主張を争った。
英紙ガーディアンによると、ベハールは製品上の問題をマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者へ少なくとも100回説明したと見積もり、2021年には有害な体験と青少年への影響をメールで警告したが、返答はなかったと証言した。これらの発言も、法廷で後続の証拠やMeta側の反対尋問と合わせて評価される性質のものだった。
Meta、資料の「切り取り」と反論
Meta側の弁護士ポール・シュミット氏は、一部の青少年がSNSの利用時間を管理しにくい点は認めつつ、州側が社内資料や発言、研究を文脈から切り離したと主張した。会社側は、若者向けの強化されたプライバシー設定や、Instagramを1時間使うと閉じるよう促す通知を対策として挙げた。
NPR/WUSFは、Metaが州側の主張には根拠がないと否定し、未成年者向け保護策の実績を主張した一方、州側は社内資料と公表内容に食い違いがあったとして設計変更と金銭的な救済を求めたと報じた。
Metaは13歳未満の利用者にアカウント作成を認めておらず、該当すると判断したアカウントを100万件超停止したと法廷で説明した。ただし、この数字はMeta側の説明であり、13歳未満の利用実態や検出率の全体像を示すものではない。
1.4兆ドルは確定額ではなく事前試算
NPR/WUSFによると、州側代理人が事前手続きで示した初期試算では潜在的な制裁金の上限が約1.4兆ドルに達したが、Metaは計算を争い、州側も特定額を請求してはいなかった。カリフォルニア州司法長官ロブ・ボンタ氏も、求める金額を明示しなかった。8月21日時点で裁判所がMetaに1.4兆ドルの支払いを命じた事実はなかった。
この連邦訴訟は、ニューメキシコ州裁判所がMetaに5億6700万ドルの追加負担と安全対策を命じた事件とは別である。裁判所、原告、法的な争点が異なるため、ニューメキシコ州の判断を29州訴訟の結論として扱うのは誤りとなる。
8月21日時点では結論出ず
審理は当初、約6週間に及ぶ見込みだった。8月21日時点ではベハールの証言は州側の立証の一部にすぎず、Metaの答弁、社内文書、他の証人の証言を踏まえた判断は出ていなかった。残る25州の事件も別に審理される予定で、先行4州と同じ経過をたどるとは限らなかった。
争われたのは米国の連邦法と州法に基づく責任であり、州側が求めた設計変更が日本のInstagramやFacebookへ直ちに及ぶものではない。Metaが同じ変更を日本向けサービスに導入するとした公表資料は、本稿が対象とする8月21日までの範囲では確認できていない。
よくある質問
ニューメキシコ州の5億6700万ドル命令と同じ事件か
別件である。本稿の29州訴訟はオークランドの連邦地裁で審理され、ニューメキシコ州の事件は州裁判所で争われた。
Metaに1.4兆ドルの支払いが命じられたのか
8月21日時点では命じられていなかった。1.4兆ドルは州側代理人が示した潜在的な制裁金の上限試算で、州側が特定額として請求した金額でもなかった。
ベハールの証言だけでMetaの違法性が確定したのか
確定していない。ベハールは州側証人であり、証言はMetaの反論や他の証拠と合わせて評価される段階だった。
出典・参考資料
- Former Meta engineer says Instagram took a 'don't ask, don't tell' approach on kids under 13(Associated Press)4州が先行する29州訴訟、ベハールの経歴と8月19日の証言、Metaの反論を確認した報道
- Zuckerberg lied about concern for child safety, Meta whistleblower testifies at landmark trial(The Guardian)ベハールがザッカーバーグ氏へ説明した回数、2021年のメール、13歳未満のアカウントを巡るMeta側の説明を報じた記事
- 'Profits won.' The child safety trial against Meta kicks off in federal court(NPR/WUSF)州側の設計・COPPA違反の主張、Metaの反論、1.4兆ドルの事前試算の位置づけを確認した報道
- Ahead of Opening Statements, Attorney General Bonta Lays Out Case Against Meta(カリフォルニア州司法省)提訴年、先行4州、対象となる連邦・州法、8月18日の開廷予定を示した州司法省の公式発表