ルテインは、緑黄色野菜にも含まれるカロテノイドの一種だ。サプリメントの広告では「目を守る成分」とひとまとめにされやすいが、加齢黄斑変性を扱った米国の臨床試験AREDS2(Age-Related Eye Disease Study 2)が調べたのは、健康な目や画面作業後の疲れではない。進行した加齢黄斑変性へ移る危険が高い人に、ルテインとゼアキサンチンを含む複数成分の配合を使った場合の結果である。
日本眼科学会も、こうしたサプリメントはある程度進行した人や片眼がすでに進行した人に検討され、ごく初期の人や発症していない人で予防効果は確立していないと説明している。ルテインという成分名だけを取り出し、「画面を見る人なら誰にでも必要」と読む根拠にはならない。
急な見え方の変化はサプリメントで様子を見ない
数分から数日以内に急に見にくくなった、視野の一部が欠けた、中心が暗く見える、線が急にゆがんで見える場合は、速やかに眼科を受診する。 日本眼科学会は、急激な視力低下の原因には網膜剥離、網膜血管閉塞、急性緑内障発作、脳卒中など重い病気があり、速やかな検査が必要だとしている。サプリメントの開始や増量で経過を見ない。
AREDS2の対象──健康な目を集めた予防試験ではない
AREDS2は2006〜2012年に50〜85歳の4,203人を登録し、両眼に大きなドルーゼンがあるか、片眼に大きなドルーゼンがあり反対眼がすでに進行した加齢黄斑変性である人を対象とした。全参加者には従来のAREDS配合も提示され、その上でルテインとゼアキサンチン、ω3脂肪酸、両方、プラセボの各群を比べた。ルテインだけを一般の健康な人へ与えた試験ではない。
主要解析で、ルテインとゼアキサンチンを加えた群が進行した加齢黄斑変性へ移るハザード比は0.90、P値は0.12だった。統計学的な有意差には達していない。「1割下がった」と断定するより、主要解析では追加効果を確認できなかった、と読むのが適切だ。
「26%低下」は食事摂取量が最低の群
広告で見かける「約25%」や「26%」は、全参加者を四つの介入群に分けた主要解析の数字ではない。食事からのルテインとゼアキサンチン摂取量が最低だった5分の1に限り、摂取群と非摂取群を比べた層別解析でハザード比0.74が示された。対象となる病期と食事条件を外して、「全員の発症リスクが26%下がる」と言い換えるのは研究結果の範囲を越える。
10年の数字も位置づけが異なる。AREDS2の臨床試験後まで追った報告では、ルテインとゼアキサンチンを割り付けられた群の進行リスクは非割付群に対してハザード比0.91だった一方、βカロテン群の肺がんのオッズ比は1.82だった。ただし後半は全参加者がルテインとゼアキサンチンを含む配合を受けており、当初の無作為割付だけを10年間保った比較ではない。
日本人への当てはめに残る空白
米国国立眼研究所(NEI)は、AREDS2配合の対象を中期の加齢黄斑変性が片眼または両眼にある人、もしくは片眼が後期まで進んだ人とし、早期から中期への進行は防がないと説明している。日本眼科学会も対象の線引きは同様だが、日本人を対象とした検証はまだ限られると明記する。米国の参加者で得た効果の幅を、日本人へそのまま当てはめる材料は十分ではない。
すでに加齢黄斑変性と診断されている人も、病期は商品広告では判定できない。眼底検査や光干渉断層計(OCT)などの結果を踏まえ、配合を使うかどうかを眼科医と決める必要がある。サプリメントは注射などの治療を置き換えず、通院や治療を自己判断で中断する理由にもならない。
日本の表示──届出と国の個別審査は別
日本の店頭で「目の機能」を表示する商品があっても、成分名だけで効果が認められたという意味ではない。消費者庁によると、機能性表示食品は事業者が安全性と機能性の根拠を販売前に届け出る制度で、特定保健用食品と異なり国は個別審査をしない。確認する単位は「ルテイン一般」ではなく、届出番号が付いた個々の商品、機能性関与成分、対象者、根拠資料、注意事項である。
消費者庁は、広告のキャッチコピーや体験談だけを信用せず、成分ごとの含有量と製造者、注意事項を確かめ、医薬品との併用を自己判断で決めないよう案内している。「治る」「視力が戻る」「白内障を防ぐ」といった疾病の治療・予防を示す宣伝は、機能性表示食品の届出表示とは別物だ。
喫煙歴、妊娠、持病、服薬がある場合
現在喫煙している人と過去に喫煙していた人は、旧AREDS配合のβカロテンを含む製品を自己判断で選ばない。妊娠中・授乳中の人、子ども、持病のある人、常用薬のある人は、成人一般の試験結果を当てはめず、利用前に医師または薬剤師へ相談する。複数の錠剤やカプセルを重ねれば、ルテイン以外のビタミンやミネラルも重複する。
よくある質問
画面を見る時間が長ければ、ルテインを飲むべきか
AREDS2からは判断できない。試験参加者は進行した加齢黄斑変性へ移る危険が高い人で、画面作業後の疲れを対象にしていない。
AREDS2はルテインでリスクが26%下がると証明したのか
全参加者を使った主要解析では、プラセボに対するハザード比0.90、P値0.12で有意差に達しなかった。0.74という値は、食事からのルテインとゼアキサンチン摂取量が最低の5分の1に限る解析である。
機能性表示食品なら国が効果を認めた商品か
違う。機能性表示食品は事業者責任の届出制で、国による個別審査を経た特定保健用食品とは制度が異なる。届出番号から根拠資料と対象者、注意事項を確認する。
加齢黄斑変性と診断されたら市販品を選べばよいか
病期、反対眼の状態、喫煙歴、服薬状況で判断が変わる。眼科医に検査結果を確認し、サプリメントを使う場合も通院や治療を中断しない。
出典・参考資料
- 加齢黄斑変性(日本眼科学会)サプリメントが検討される病期、発症前・ごく初期で予防効果が確立していないこと、日本人での検証が限られること
- 急に見にくい(急激な視力低下)(日本眼科学会)数分から数日以内の視力低下では速やかな眼科受診が必要との案内
- AREDS2 main results(JAMA / PubMed)参加者、試験設計、主要解析のハザード比とP値
- AREDS2 Report No. 3(JAMA Ophthalmology)食事摂取量が最低の5分の1における層別解析
- AREDS2 Report 28(JAMA Ophthalmology / PubMed)10年追跡での進行リスクとβカロテン群の肺がんリスク
- AREDS 2 Supplements for Age-Related Macular Degeneration(National Eye Institute)中期・後期の加齢黄斑変性に対する対象範囲と、早期から中期への進行を防がないこと
- 機能性表示食品について(消費者庁)機能性表示食品は事業者責任の届出制であり、国が個別審査する制度ではないこと
- 健康食品(一般の方向け)(消費者庁)広告や体験談だけに頼らず、成分量や注意事項を確認し、医薬品との自己判断の併用を避けるとの案内