作り置きの安全性は、日付が変わったかどうかより、調理後の温度と時間、扱い方に左右される。「一晩置いた野菜は亜硝酸塩が増えて危険」「栄養がなくなる」「一晩で腐る」という三つの説は、同じ問題として扱えない。

食品安全委員会が収載した香港食物安全センターの研究情報では、5種類の調理済み野菜と野菜スープを0〜4℃で保存した試料から、一晩後に亜硝酸塩は検出されず、72時間後に一部から微量が検出された。室温で保存した試料では12時間後から検出され始めており、研究は野菜の種類より保存温度が硝酸塩から亜硝酸塩への変化を左右したと結論づけた。

先に確認する受診の警告サイン

食後に突然の強い腹痛が出た、強い痛みが続く、血便や血の混じった吐物がある、意識がもうろうとする場合は、119番を含め直ちに医療へつなぐ。激しい嘔吐や下痢で水分を取れない、尿量が減った、尿が濃くなった場合も早い受診が要る。総務省消防庁の救急受診ガイドは、急に起きた強い腹痛、持続する強い腹痛、血の混じった便や吐物、激しい嘔吐や下痢、尿量の減少、意識の変化を緊急度判断の項目に挙げている

乳幼児、妊婦、高齢者、持病や常用薬がある人

乳幼児と高齢者は、嘔吐や下痢で水分を保てない時に脱水へ進むおそれがある。妊娠中の人、高齢者、免疫機能が低下している人は、冷蔵食品でもリステリアの危険を別に考える必要がある。厚生労働省は、リステリアは4℃以下でも増殖し、妊婦、高齢者、抗がん剤治療中など免疫機能が低下した人では少量でも重症化する場合があると説明している。小児、妊婦、持病や常用薬がある人に成人一般の経過観察をそのまま当てはめず、症状が出たら医療機関へ早めに相談する。

「一晩で亜硝酸塩が急増」は実測と合わない

野菜に含まれる硝酸塩は、環境中の細菌の働きで亜硝酸塩へ変わりうる。香港当局の研究では、調理前と調理直後の全試料から亜硝酸塩は検出されなかった。冷蔵では細菌の増殖と活動が抑えられ、生成が遅れたと推定している。

ただし、この結果が示すのは、試験した野菜5種類と野菜スープの亜硝酸塩に限られる。肉、魚、卵、米飯の残り物や、細菌が作る毒素まで安全と示した試験ではない。日本国内で同じ試料と条件を使った公的な一晩保存の実測資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。

透明な保存容器に分けた調理済みの料理(イメージ)

「一晩で栄養がなくなる」も言い過ぎ

農林水産省は、野菜へ火を通しすぎるとビタミンやミネラルが失われたり、煮汁へ流れ出たりするため、加熱時間に注意するよう案内している。これは主に調理法と加熱時間の問題であり、「冷蔵庫で一晩置くと栄養がすべて消える」という根拠にはならない。食材や調理法で残る成分は異なるため、一晩前の料理を一律に「栄養がない」とは評価できない。

保存の基準──一晩より温度履歴を確認

農林水産省は、食中毒菌が増えやすい温度を約20〜50℃とし、その範囲に食品を置く時間を極力短くするよう求めている。調理済みの料理を食卓や鍋に置き続けず、残す分は早い段階で冷蔵へ移す。一晩たっていなくても、長く室温へ置いた料理は温め直しだけで安全な状態へ戻るとは限らない。

厚生労働省は、家庭の冷蔵庫を10℃以下に保ち、残り物は清潔な浅い容器へ小分けして早く冷やし、温め直す際は75℃以上を目安に十分加熱するよう示している。生の肉や魚の汁が調理済み食品へかからないよう容器や器具を分けることも、交差汚染を防ぐ基本になる。

鍋の料理を湯気が出るまで温め直す様子(イメージ)

保存日数だけを見て「まだ食べられる」と判断するのも危うい。食品の量、容器の深さ、冷蔵庫へ入れるまでの時間、庫内の詰まり方で冷える速さは変わる。保存の経緯が分からない料理、長く室温へ置いた料理、少しでも怪しい料理は味見で確かめず処分する。

よくある質問

冷蔵庫へ一晩入れた野菜は亜硝酸塩が増えるのか
香港当局が5種類の調理済み野菜と野菜スープを調べた試験では、0〜4℃で一晩保存した後も検出されなかった。ただし、対象外の食品や別の危害まで安全とする結果ではない。

冷蔵庫なら何日置いてよいのか
日本の家庭向け公的資料は、すべての料理に共通する保存日数を一つに定めていない。消費期限や保存表示を優先し、残り物は浅い容器へ小分けして速やかに冷蔵し、時間が経ち過ぎた物は処分する。

においや見た目で安全を判断できるのか
異臭、変色、粘りがあれば食べない。一方、食中毒菌や毒素は外観やにおいに異常がない段階でも存在しうるため、異常がないことは安全の証明にならない。

温め直せば室温放置を帳消しにできるのか
温め直しは75℃以上が目安だが、保存状態の悪さを取り消す手段ではない。室温に長く置いた物や保存履歴が分からない物は、再加熱を安全確認の代わりにしない。