中国市場でAOCがモニター全製品の値上げを通知し、KTCも今後の価格調整を示唆したと報じられた。両社が理由に挙げたのは、チップや基板を含む上流部品のコスト増である。ただし、二つの発表は確度と適用時期が異なり、日本の店頭価格が同じ幅で上がると判断できる材料はまだない。
中国向けの発表──AOCは実施、KTCは予告報道
VideoCardzが掲載した通知によると、中国でAOCのモニター事業を担うEdmond Technology(Wuhan)は、2026年8月1日から全モニター製品を値上げし、チップ、マザーボード、原材料のコスト増を理由に挙げた。通知は製品ごとに改定幅が異なるとしたが、具体的な率や新価格は示さなかった。対象は中国の流通業者であり、他地域への適用は確認されていない。
KTCについては、中国の技術メディア「快科技」が、同社が8月14日付の書面で中核部品の値上がりと完成品の生産コスト増を説明し、今後の価格調整を示唆したと報じた。同媒体の記事には改定率、新価格、適用開始日の記載がない。KTCの公式企業サイトで同じ書面を確認できなかったため、AOCの実施済み通知と同列の一次発表としては扱えない。
両社の情報から確定するのは、中国市場でコスト転嫁の動きが出たことまでだ。中国向け価格を日本円に換算したり、全製品が同時に同じ率で上がると見積もったりする根拠にはならない。
上流コスト──パネルと表示ドライバーICを分ける
モニター原価では、画面を構成する液晶(LCD)パネルと、映像信号を画素の動作へ変換する半導体を分けて見る必要がある。TrendForceは、中国の上位3社が2026年の世界の液晶モニターパネル供給の74%を占めると推計し、AUOがL6A工場を閉鎖した場合には世界供給が500万枚近く減ると試算している。LG Displayが液晶生産を減らして有機ELへ資源を移す動きも、供給構造を変える要因に挙げた。
500万枚近い減少は、L6Aの閉鎖を仮定した将来の試算である。現時点ですでに同数が市場から消えたわけではない。供給元の集中は調達リスクを高める一方、需要の弱まりや別工場への生産移管があれば、完成品価格への波及は変わる。
もう一つの焦点が表示ドライバーIC(Display Driver IC、DDIC)だ。TrendForceは、DDIC原価の約60〜70%を半導体製造、約20%を後工程のパッケージングと検査が占め、製造費や金などの材料費の上昇を受けて一部のDDIC供給企業が価格調整を検討していると報告した。同社は、実際の調整幅は製品の種類、用途、顧客構成で変わるとも記している。
公開データは、すべてのパネルが一律に急騰しているとは示していない。TrendForceの2026年6月初めの見通しでは、23.8型フルHD(FHD)モニターパネルは0.2ドル、27型FHDは0.1ドルの上昇予測だった一方、その他のサイズと仕様は横ばいだった。上流のコスト圧力は確認できるが、それだけで個別製品の改定率は算出できない。
日本で確認できるのは販売価格の断面
AOC日本公式サイトはAmazon、ヨドバシ.com、ビックカメラなど複数の国内販売店を購入先として案内している。メーカーが単一の直販価格を示す形ではなく、実売価格は販売店の在庫、セール、ポイント還元で異なる。
KTC日本公式ストアは2026年8月15日の確認時に25製品を掲載し、多くの型番で通常価格とセール価格を併記していた。セール終了で表示額が上がった場合と、メーカーが通常価格を改定した場合は意味が違う。単日の価格だけを見ても、上流コストが転嫁されたかは判定できない。
AOC日本サイトのニュース欄では、国内一斉の価格改定を示す掲載を確認できなかった。KTC日本公式ブログの最新掲載は2026年4月11日付で、8月の国内価格改定に関する告知は見当たらなかった。未掲載は将来の値上げがないことを意味しないが、中国向け発表だけで日本での実施日や改定幅は置けない。
購入前にそろえる四つの条件
第1は型番である。末尾の地域記号まで一致させ、画面サイズ、解像度、パネル方式、リフレッシュレート、端子、スタンドの調整範囲をそろえる。名称が近くても仕様が違えば、価格差を値上げとみなせない。
第2は通常価格とセール価格、第3はポイント、送料、保証を含む支払総額、第4は同一型番の価格履歴だ。販売店ごとの表示を同じ日に記録し、セールの開始と終了を分けると、通常価格そのものが変わったかを追いやすい。展示品、並行輸入品、中古品は保証条件が異なる場合があるため、新品の国内正規流通品と混ぜない。
故障の代替や仕事上の期限がある場合は、未公表の値上げ率を待つより、必要な仕様と予算上限を決めて現在の総額を比べる方が判断しやすい。購入期限がない場合は、国内メーカーの告知と複数販売店の同一型番価格が同じ方向に動くかを確認する余地がある。中国の通知だけを理由に購入を急ぐ必要はない。
よくある質問
AOCとKTCは日本でも値上げするのか
AOCの通知は中国向けで、KTCも中国メディアが伝えた書面である。日本国内の一斉改定日、対象型番、改定率を示す公表資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。
値上げ前に急いで買うべきか
中国向け発表だけでは決められない。必要な時期、同一型番の実売価格、セール条件、保証をそろえて判断する。期限がなければ、国内の正式告知と価格履歴を待つ選択もある。
パネル供給が減れば全モニターが同じ率で上がるのか
同じ率にはならない。液晶、有機EL、ミニLED(Mini LED)では供給構造が異なり、同じ液晶でもサイズと仕様で需給が違う。部品費、為替、在庫、販売店の販促も実売価格を動かす。
出典・参考資料
- AOC raises monitor prices in China starting this month(VideoCardz)AOC中国事業の2026年8月1日付通知、対象範囲、理由、改定率が未公表であることを確認
- KTC、モニター製品の今後の値上げを示唆(快科技)2026年8月14日付書面を伝えた中国市場向け記事。公開ページの応答を本稿執筆時点で確認できなかったためURLを掲載せず、二次報道として扱った
- Capacity Rationalization by Taiwan’s Two Panel Giants to Reshape TV, Monitor, and Notebook Panel Supply by 2028, Says TrendForce(TrendForce)中国上位3社の液晶モニターパネル供給比率と、AUOのL6A閉鎖を仮定した供給減の試算
- Rising Foundry and OSAT Costs Prompt DDIC Suppliers to Consider Price Increases, Says TrendForce(TrendForce)表示ドライバーICのコスト構成と、価格調整が製品や顧客構成で異なるとの見通し
- Early June Panel Prices: TV Demand Weakens; MNT Price Gains Lose Momentum, NB Stays Flat(TrendForce)2026年6月の23.8型、27型フルHDモニターパネルの上昇予測と、その他の仕様が横ばいとの見通し
- オンラインショップ(AOC Japan)AOC製品を扱う日本国内の販売店一覧
- AOC Japan ニュース(AOC Japan)日本向け価格改定告知の掲載状況を2026年8月15日に確認
- KTC モニター全製品一覧(KTC Japan)日本公式ストアの製品数と通常価格、セール価格の表示を2026年8月15日に確認
- KTC ブログ(KTC Japan)日本向け価格改定告知の掲載状況と最新記事の日付を2026年8月15日に確認