自作PCを新学期に間に合わせたい学生にとって、2026年のメモリー(RAM、Random Access Memory)とSSD(Solid State Drive)は予算を読みづらい部品になった。AIサーバー向け需要で契約価格が上がる一方、日本の店頭では特価の終了や品切れでも価格が大きく動く。必要容量を用途から固定し、電源、保証、増設余地を先に守ることが、予算超過を抑える出発点になる。

基板上のプロセッサーを接写したPC部品の供給網を表す場面(イメージ)

日本の店頭価格──上昇基調でも特価は混在

AKIBA PC Hotline!が2026年8月8~22日に秋葉原の複数ショップを調べたところ、DDR5-5600の8GB×2枚組(合計16GB)は22日時点で税込み最安2万8800円、16GB×2枚組(合計32GB)は5万5980円だった。32GB構成は特価で前回から4000円下がった一方、DDR5-6400の16GB×2枚組は4000円高の6万1980円となった。容量が同じでも、規格、クロック、特価の有無で支払額は分かれる。

メモリーチップと基板の金色端子を接写した場面(イメージ)

SSDの値動きはさらに不規則だ。同じ秋葉原調査では、SandiskのWD Blue SN5100 4TBが8月8日と15日に税込み5万9980円で特売された後、22日時点では品切れとなり、最安値は前回比2万7820円高の8万9800円へ上がった。同じ型番でも、安値の在庫が切れれば表示上の最安値は一度に跳ね上がる。値下がりした型番と値上がりした型番が同じ週に並ぶため、「SSD全体が何%上がった」という一つの数字だけでは購入額を決められない。

これらは日本の店頭で実際に記録された価格だが、対象は秋葉原の複数ショップに限られる。日本全国の自作PC部品の小売平均を示す公的な統計は、本稿の執筆時点で確認できていない。通販、量販店、地方店を含む全国相場ではなく、2026年8月の国内店頭で起きた変化の一例として扱う必要がある。

供給の背景──AIサーバーへ向かうメモリー

TrendForceは2026年第3四半期の一般型DRAM(Dynamic Random Access Memory)契約価格を前四半期比13~18%、NAND型フラッシュメモリー(NAND Flash)契約価格を10~15%の上昇と予測し、サーバー用途への生産能力の再配分がPC向けDRAMの供給を減らしていると分析した。NAND型フラッシュメモリーではAI推論と大規模データセンターの導入が需要を支える。消費者向けPCとスマートフォンの需要が弱まっても、供給制約そのものが解けたという判断ではない。

ただし、契約価格はメーカーと大口顧客の取引を示す数字で、店頭の値札とは違う。国内の小売価格には為替、流通在庫、税、各店の特価が加わる。13~18%という予測を個々のメモリーキットへ足したり、10~15%をSSDの値上げ率として使ったりするのは適切ではない。

完成品PCにも部材高の影響が表れ始めた。VAIOは2026年8月27日、生成AIの普及に伴うDRAMなどの需要拡大と関連部材価格の高止まりを理由に、国内の個人向けPCを9月18日から値上げすると発表した。対象は公式オンラインストアのほぼ全製品などで、改定後価格は9月18日に公表される。発表時点では値上げ幅が示されておらず、自作と完成品のどちらが安いかは構成ごとの総額で比べる必要がある。

データセンターの通路両側にサーバーラックが並ぶ様子(イメージ)

メモリー容量──16GBと32GBは使用ソフトで分ける

容量は相場だけで削らず、入学後に使う最も重いソフトから決める。Microsoftが示すWindows 11の最小要件はRAM 4GB、ストレージ64GBで、同社は個別のアプリや機能がこの最小要件を上回る場合があると説明している。この数字はOSを動かす最低線であり、授業や制作作業を快適にこなす推奨構成ではない。

レポート作成、ブラウザー、オンライン授業、一般的なオフィスソフトが中心なら、16GBを最初の候補に置ける。購入前には、学校が指定するアプリの公式推奨要件を並べ、その中で最も大きい容量を基準にする。ブラウザーと授業用アプリを同時に開く使い方も加味する。

動画編集、仮想マシン、大型の開発環境を使う授業では32GBを先に検討する。AdobeはPremiereについて、WindowsまたはIntel搭載Macで32GB以上のRAMを推奨している。Premiereを使うことが決まっているのに16GBへ抑えると、後から増設費が発生する。増設を前提に16GBから始める場合は、マザーボードの対応容量、空きスロット、現在のモジュール構成を購入前に確認する。

SSD容量──速度より保存量と増設条件を先に確認

512GBと1TBの分かれ目は、いま使っているPCの保存量と、授業開始後に増えるデータで決まる。文書、写真、ブラウザー中心で、大きなデータを外部ストレージやクラウドへ分ける運用なら512GBを候補にできる。ゲーム、動画素材、編集用キャッシュ、開発環境を同じPCへ置くなら1TBから見積もる方が、短期の増設を避けやすい。クラウド同期でも端末側に複製を残す設定があるため、現在の使用量はエクスプローラーで確認する。

容量を後から足す案では、マザーボードのM.2スロット数、対応するSSDの長さ、PCIe世代、ほかのスロットとの共有条件、ヒートシンクの有無を説明書で照合する。空きスロットがなければ、小容量SSDを買った時点で交換作業とデータ移行が将来の費用になる。一般的な授業やオフィス用途では、PCIe 5.0の最高速度や装飾より、必要容量、保証、増設のしやすさを先に予算へ入れる。

机上にM.2 SSD、メモリーモジュール、記憶チップを並べた様子(イメージ)

削らない予算──電源、保証、バックアップ

値札を下げるために電源ユニットの定格出力や接続端子を削ると、将来のグラフィックスカード増設で買い直しが生じる。CPUとGPUを含む構成の消費電力、必要な補助電源端子、メーカー保証、保護機能を製品仕様で確かめる。出所を確認できない製品や、必要量ぎりぎりの定格出力を価格だけで選ぶのは避けたい。

黄色い背景にPC用電源ユニットとモジュラーケーブルを置いた場面(イメージ)

SSDは保証期間と書き込み耐久性の指標を比べる一方、製品保証とデータの復旧を同じ扱いにしない。情報処理推進機構(IPA)は個人利用者に対し、システムの不具合やウイルスによるデータ破壊に備え、重要なデータを外部記憶媒体などへ定期的にバックアップするよう求めている。提出前の課題や研究データを内蔵SSDの一か所だけに置かず、別の媒体または管理できるクラウドへ複製する費用も予算に含める。

購入前の四つの優先順位

1.授業と作業の要件
学校が指定するOSとソフトの推奨仕様を集め、最も重いアプリを基準にCPU、GPU、メモリー容量を固定する。

2.保存容量とバックアップ
現在の使用量、授業で増えるファイル、ゲームや動画の保存量を足し、512GBか1TB以上かを決める。バックアップ先は内蔵SSDと別に用意する。

3.電源と増設余地
電源の定格出力と端子、メモリースロット、M.2スロット、ケース内の空間を確認し、次の増設で主要部品を買い直す構成を避ける。

4.後順位の仕様
RGB、高クロック・低遅延メモリー、PCIe 5.0 SSD、使わない拡張端子は、必要容量、安定性、保証を確保した後に予算を配る。

今買うか、待つか

現在のPCで授業を始められるなら、同じ型番、容量、保証条件を固定し、店頭と通販の価格を追う余地がある。比較対象が違えば、値下がりに見えても容量や保証が減っている場合がある。目標価格に届くまで待つ場合も、在庫切れになったときの代替型番を先に決めておく。

開講日までにPCが必要なら、価格予測より納期を優先する。TrendForceの予測は2026年第3四半期の契約価格がなお上がる方向を示すが、日本の小売価格が毎週上がるという意味ではない。自作PCと完成品は、税込みの本体価格、Windowsライセンス、送料、組み立て、初期不良対応、保証、増設制限まで含めた総額で比べる。

机上にSSDと検査用工具を並べた場面(イメージ)

よくある質問

新学期前はメモリーとSSDの値下がりを待つべきか
現在のPCで授業を始められるなら、同じ型番と条件で価格を追う選択肢がある。期限までに必要なら、必要容量を満たす構成を先に確保する。2026年第3四半期の契約価格予測は上昇方向だが、国内店頭では特価と品切れで短期の価格が上下する。

文書作成用のPCは16GBと32GBのどちらか
レポート、ブラウザー、オンライン授業、一般的なオフィスソフトが中心なら16GBを最初の候補にする。動画編集、仮想マシン、大型の開発環境を使う場合は、各ソフトの公式推奨要件を確認し、32GBを先に検討する。

SSDは512GBを買い、後から増設すればよいか
文書中心で保存量が少なく、別のバックアップ先があるなら512GBを候補にできる。ゲーム、動画、開発環境を本体へ置くなら1TB以上から見積もる。購入前にM.2の空きスロット、対応する長さ、レーン共有条件を確認し、空きがなければ交換とデータ移行の費用を加える。