米国とイランの戦闘は、ホルムズ海峡の通航をめぐる対立を軸に周辺国へ広がった。イランは7月17日、米軍が駐留するヨルダンのムワファク・サルティ空軍基地(Muwaffaq Salti Air Base)を弾道ミサイルと無人機で攻撃した。米軍は米兵2人が死亡し、1人が行方不明、4人が入院したと発表した。
AP通信によると、米軍は基地攻撃への報復としてイラン革命防衛隊の拠点を空爆し、ホルムズ海峡でタンカーの通航を制限するイランの軍事能力を弱める狙いだと説明した。攻撃対象にはイラン南部のシリク、ハジアバド、バンダルアバス、ゲシュム島周辺が含まれた。
追加空爆を見送り、海峡開放を条件に
戦闘が続くなか、トランプ米大統領は8月1日、新たな対イラン攻撃を見送ると発表した。条件に挙げたのは、ホルムズ海峡の「即時、完全、全面的な開放」と、イランによる核の脅威の終結である。具体的な条項や履行日程は示さなかった。
Al Jazeeraは、トランプ氏がイランと中東諸国から攻撃中止を求められたと説明した一方、イランが要請を否定し、軍の警戒態勢を維持したと伝えた。カタール、パキスタン、トルコ、アラブ首長国連邦などが緊張緩和を働きかけたが、協議の仲介者と合意文書は当初公表されなかった。
「直接交渉」をめぐり米イランの説明に差
新華社によると、トランプ氏は8月2日、翌日からイランとの交渉を始め、ホルムズ海峡とイランの非核化を扱うと記者団に述べた。これに対し、イラン外務省は米国との直接交渉を否定し、オマーンとの協議は海峡を安全に通る航路に関するものだと説明した。
双方の違いは、交渉の呼び方にとどまらない。米国は承認や料金を伴わない自由通航を求め、イランは自国側を通る進入航路の管理を主張している。追加空爆が見送られても、海峡を誰がどの条件で管理するかは決着していない。
航路案は海峡の全面再開を意味せず
AP通信は8月9日、イランとオマーンが船舶をイラン側からペルシャ湾へ入れ、オマーン側から出す暫定案を詰めている一方、イランのアラグチ外相が「海峡の再開を意味しない」と述べたと報じた。交渉関係者は暫定期間中に料金を課さない案を説明したが、条項はなお変わりうる。
海上の危険も残る。AP通信が引用したLloyd’s List Intelligenceの集計では、海峡の通航は7月27日から8月2日の週に84隻となり、前週の45隻から増えた。それでも危機前の通常週に記録された700隻超には遠い。同じ1週間に少なくとも2隻が攻撃を受け、別の船も飛来物や警告を報告した。
日本への影響──原油調達と現地安全
資源エネルギー庁は、日本の原油輸入の中東依存度が9割を超え、2026年3月以降は中東からの原油輸入が大幅に減ったと説明している。海峡の通航回復が遅れれば、輸送量、保険料、調達価格を通じて日本のエネルギー供給にも影響が続く。
外務省は7月9日、イラン、ヨルダン、オマーン、湾岸諸国などを対象に、最新情報を複数の情報源から集め、軍事施設へ近づかないよう注意を出した。8月1日以降の攻撃見送りや新たな航路案について、日本政府が個別に評価した公表資料は本稿の執筆時点で確認できていない。
よくある質問
米国はイランへの攻撃を全面的に終えたのか
全面終結ではない。トランプ氏が見送ったのは予定していた新たな攻撃で、ホルムズ海峡の開放と核問題を含む合意の早期成立を条件にした。
ホルムズ海峡は再開したのか
全面再開には至っていない。通航数は増えたが危機前を大きく下回り、イラン側もオマーンとの航路協議は海峡再開そのものを意味しないと説明している。
イランと米国は直接交渉しているのか
両国の説明は一致していない。トランプ氏は交渉開始を発表したが、イランは米国との直接交渉を否定し、オマーンとの航路協議や仲介者を通じた伝達だとしている。
出典・参考資料
- US military launches new airstrikes to ‘swiftly punish’ Iran for deaths of US troops(WWSB(Associated Press))ヨルダンの基地攻撃による米兵の死傷と米軍の報復空爆
- Why has Trump halted Iran attacks, and what is the deal he is hinting at?(Al Jazeera)追加攻撃見送りの条件、イラン側の否定、地域の仲介
- Trump announces talks with Iran on Monday(Xinhua)トランプ氏が発表した交渉日程と対象分野
- Israel rejects Trump’s Gaza plan, more details emerge on the Strait of Hormuz and other Mideast news(Associated Press)8月9日時点のイラン・オマーン協議、暫定航路案、通航条件
- 今こそ知りたい、日本の「石油備蓄」のしくみとは?(資源エネルギー庁)日本の中東原油依存、輸入減少、石油備蓄の状況
- 中東情勢の急激な変化の可能性に関する注意喚起(7月9日)(外務省)中東の対象国・地域に滞在する日本人への安全上の注意