米中西部インディアナ州では、8月11日から続いた暴風雨と豪雨で河川が相次いであふれ、道路や住宅が浸水した。ホワイト川の水位は複数地点で過去最高となり、上流側から州都インディアナポリスへ被害が広がった。

AP通信の8月16日付本文によると、一連の悪天候で少なくとも6人が死亡した。同日正午も州内の約13万戸が停電しており、停電はピーク時に約30万戸へ達した。死者数と停電戸数は救助や復旧の進展で変わるため、本稿では公表時点を明記する。

2日で280ミリ超 ホワイト川が1913年の記録更新

米国立気象局(National Weather Service、NWS)によると、州内の一部では2日間の雨量が11インチ(約280ミリ)を超えた。ホワイト川はアンダーソンとノーブルズビルで24フィート(約7.3メートル)を超え、1913年の記録を更新した

インディアナポリス消防は8月15日午後までに95人とペット45匹を救助した。州知事室は州内の別地域で350件超の避難があったとし、州兵の車両も救助に加わった。16日にはインディアナポリスのホワイト川がピークを越え、上流側でも水位が下がり始めたが、住宅、道路、橋の被害確認は続いた。

冠水した道路と水に漬かった車(イメージ)

州全域の緊急事態 大統領も連邦支援を承認

インディアナ州の公式一覧には、マイク・ブラウン知事が知事令26-21で洪水、暴風雨、竜巻などを理由に州全域の災害緊急事態を宣言したことが記録されている

AP通信は8月15日、トランプ大統領がインディアナ州の緊急事態宣言を承認し、米連邦緊急事態管理庁(Federal Emergency Management Agency、FEMA)による州への連邦災害支援が利用可能になったと報じた。ここで確認されたのは緊急事態宣言(emergency declaration)であり、大規模災害宣言(major disaster declaration)が出たとの記述ではない。AP通信の報道からは、個人向け支援の対象地域や費目までは確認できない。

FEMAの洪水地図──「年1%」の規制境界

FEMAの洪水保険料率地図(Flood Insurance Rate Map、FIRM)は、保険と土地利用規制の基準になる地図だ。FEMAの教材は、FIRMが過去の気象・水文・水理データと、土地利用、地形、湿地、治水施設、開発状況などを基に作られ、年1%以上の確率で浸水する特別洪水危険区域(Special Flood Hazard Area、SFHA)や保険区分を示すと説明している

「100年に1度の洪水」は100年ごとに1回起きるとの意味ではなく、各年の発生確率が1%の洪水を指す。FEMAは、30年間に少なくとも1回起きる確率を26%としている。FIRMの外側を「浸水しない区域」と読むのは、この規制地図の用途を超える。

NPRとPBS「Frontline」の調査報道で、気候リスク分析会社First Streetのジェレミー・ポーター氏は、ハリケーン・ヘリーンの影響を受けた物件のうちFEMAの洪水区域内にあったのは約2%で、98%は区域外だったと説明した。同社は豪雨による浸水を既存モデルが捉えにくいとみている

この98%はノースカロライナ州西部のヘリーン被災地を対象とした民間分析である。インディアナ州のFIRMが同じ割合で被害を見落としたことを示す数字ではない。今回の豪雨と気候変動との因果を個別に評価したイベント・アトリビューション研究も、本稿執筆時点で確認できていない。

日本向け公的情報には空白

外務省の米国向け「危険・スポット・広域情報」には、本稿執筆時点で今回のインディアナ州洪水に特化したスポット情報も、現地大使館・総領事館の安全情報も掲載されていない。これは日本人の被害や交通への影響がないとの確認ではない。

日本側の国別ページと現地当局の発表には、対象範囲と更新時刻の差がある。被災地域では、州、郡、市とNWSが出す避難情報、道路閉鎖、河川水位を同じ時点で照合する必要がある。

よくある質問

「100年に1度の洪水」は100年間に1回だけ起きるのか
違う。ある地点で同規模の洪水が起きる確率が各年1%との統計上の区分である。翌年に再び起きる可能性もある。

インディアナ州への連邦支援は承認されたのか
トランプ大統領が8月15日に緊急事態宣言を承認した。州への連邦災害支援は利用可能になったが、個人向け支援の対象地域と費目は別途確認が要る。

FEMAの区域外なら洪水リスクはないのか
区域外でも浸水は起こりうる。FIRMは年1%の洪水を基準に保険と規制の区域を示す地図で、豪雨、支流、排水能力を含む全ての浸水可能性を示す境界ではない。