エクアドルのダニエル・ノボア大統領は2026年8月、中国を公式訪問する予定だ。ノボア氏が4月に示した計画は訪問月までで、詳しい日程と協議項目は公表されなかった。2025年6月以来の訪中となる。

今回の訪問は、両国の包括的戦略パートナーシップが10年を迎える時期に重なる。中国外務省の国別資料は、両国関係が2016年11月に包括的戦略パートナーシップへ格上げされ、ノボア氏が2025年6月に中国を訪れたと記録している

FTAは2024年5月発効

自由貿易協定(Free Trade Agreement、FTA)は2023年5月11日に署名された。日本貿易振興機構(JETRO)によると、双方は約90%の品目で関税を撤廃し、うち60%を発効時に即時撤廃する設計とした。中国側の段階撤廃対象にはバナナ、エビ、カカオなどが、エクアドル側には機械、電気設備、自動車・部品などが入る。

エクアドル税関庁は、協定が2024年5月1日に発効し、同日から中国原産品への協定税率を通関システムに反映したと告知している。協定は関税を一斉にゼロへ下げる仕組みではなく、品目ごとに即時撤廃と段階撤廃を組み合わせる。

バナナ農園で収穫作業をする人々(イメージ)

2025年は輸出17.6%増、輸入30.0%増

エクアドル中央銀行によると、2025年の対中輸出は59億8810万ドルで前年比17.6%増、対中輸入は78億6570万ドルで30.0%増だった。中国は国別の輸出先で米国、パナマに次ぐ3位、輸入元で米国に次ぐ2位となった。対中貿易赤字は2024年の9億6210万ドルから2025年の18億7760万ドルへ拡大した。

これらはFTA発効後の実績だが、伸び率は関税削減の効果だけを切り出した数字ではない。エビや銅精鉱の需要、国際価格、為替、輸送条件も金額を動かすため、協定の効果を測るには品目別の数量と利用率の検証が要る。

「外資の半分」は2024年の年間フロー

エクアドル中央銀行の国際収支報告では、2024年の直接投資は計2億3210万ドルで、このうち中国からの投資が1億1650万ドルだった。比率は約50%だが、報告は同年の直接投資総額を2016年以降の最低額としている。中国の比率が高かった背景には、分母となる総額の小ささもある。

この数字は2024年中に記録された投資フローであり、過去の投資を積み上げた残高ではない。中国企業がエクアドル国内の資産を半分保有するという意味にもならない。訪中後に新規案件が発表された場合も、表明額、契約額、実際の資金流入を分けて確認する必要がある。

対米協定は署名済み、発効日は未確認

対米関係は2025年当時から状況が変わった。米通商代表部(Office of the United States Trade Representative、USTR)は、両国が2026年3月13日に互恵貿易協定へ署名したと発表した。このため、エクアドルに米国との貿易協定がないとする説明は現在の状態を表さない。

ただし、署名と発効は別の段階だ。協定正文の第7.7条は、双方が国内手続きの完了を書面で通知した日から30日後、または双方が決めた別の日に発効すると定める。通知完了と発効日を示す公式発表は、本稿の執筆時点で確認できていない。エクアドルは中国との発効済みFTAを運用する一方、米国とは署名済み協定の手続きを残す。

日本から見る「実利外交」

日本の外務省は、ノボア政権が米国、欧州連合(European Union、EU)、国際金融機関との関係強化を重視する一方、中国とも実利的な外交を展開していると整理する。2025年のエクアドルの対日輸出は1666億円、対日輸入は708億円、日本からの直接投資は340万ドルだった

今回の訪中に伴う日本企業への具体的な影響や日本政府の対応を示す公的資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。日本から見た焦点は、訪問中の発表の数より、発効済みの中国FTAと署名済みの対米協定が、一次産品輸出、機械・自動車輸入、投資案件にどう反映されるかにある。

よくある質問

ノボア大統領の訪中日程と会談相手は確定したのか
2026年8月の公式訪問計画は本人が明らかにした。本稿が確認した公表資料では、詳細日程、会談相手、署名予定の文書は確認できていない。

中国とのFTA発効後、エクアドルの輸出は増えたのか
2025年の対中輸出額は前年比17.6%増えた。輸入額は30.0%増で、貿易赤字も拡大した。統計はFTAの効果だけを分離したものではない。

エクアドルは米国と貿易協定を結んでいないのか
両国は2026年3月に互恵貿易協定へ署名した。ただし、発効には双方の国内手続き完了通知が要り、本稿の執筆時点で発効日は確認できていない。