キューバでは2026年8月初め、年初から6回目となる全国規模の停電が発生した。AP通信によると、かつて2〜3時間だった予定停電は予測が難しくなり、12時間、30時間、それ以上に及ぶ例が出ている。ハバナでは数分から数時間だけ電気が戻る時刻に合わせ、住民が調理、洗濯、充電を急ぐ生活が続く。

6回目の全国停電、7月だけで3回

全国規模の電力網崩壊は一度きりの事故ではない。AP通信は、国営電力会社が確認した8月初めの停電を年初から6回目とし、3月に2回、7月に3回の全国的な電力網崩壊が起きたと報じた。日常の計画停電も1日20時間を超える地域がある。

復旧しても電気がいつまで続くか分からない。72歳のレイディス・ロドリゲス(Leidis Rodríguez)さんの家庭では、午前3時に電気が戻ることもあり、以前なら10時間かけた家事を2時間に詰め込む。電気が止まれば給水ポンプも動かず、冷蔵庫の食品を保つことも難しい。

ろうそくの明かりだけがともる夜の街路(イメージ)

燃料の途絶と老朽電網が重なる

発電を支える燃料の不足が危機を深めた。米国は1月、キューバに石油を供給する国の商品に関税を課す方針を示し、長年の制裁をさらに強めた。ベネズエラからの供給が止まり、メキシコからの供給も途絶えたと報じられている。

Al Jazeeraは、7月14日の停電で約1000万人が電力を失い、キューバは2023年時点で消費する石油の約40%しか国内生産していなかったと国際エネルギー機関の数字を基に伝えた。輸入が細れば、燃料を使う発電所と交通の双方に影響が広がる構造だ。

燃料だけで原因の全ては説明できない。電力設備の多くは1960〜80年代にさかのぼり、老朽化と部品不足が障害を起こしやすくしている。キューバ政府は米国の封鎖を主因に挙げる一方、米国政府はキューバ政府の運営責任を主張する。個々の停電について、燃料不足、設備故障、運営上の問題の寄与を切り分けた独立検証は公表されていない。

交通、観光、食料保存へ連鎖

停電と燃料不足は、家庭の照明にとどまらない。AP通信は、ハバナの公共交通が事実上まひし、航空便の欠航や労働時間の短縮が起きたと伝えた。観光企業の撤退で宿泊関連の求人2万5000件が埋まらないとの業界側の数字も報じられたが、キューバ政府の雇用統計で裏づけられた値ではない。

冷蔵設備が止まれば、手に入りにくい食品や医薬品の保管も難しくなる。通貨安とインフレで食料購入そのものが重い負担となるなか、停電による腐敗が家計の損失を増やす。水のくみ上げ、調理、移動が同時に制約され、電力の問題が生活基盤全体へ波及している。

発電機と太陽光で短い通電を補う

住民は小型発電機、太陽光パネル、充電式扇風機を使い、電力が戻らない時間をつないでいる。ガソリンも不足するため、太陽光で充電する車両を選ぶ人や、ガス調理から薪に戻る人もいる。いずれも全国の電力供給を代替する設備ではなく、購入費や海外の親族からの支援を得られる世帯に限られる対応だ。

停電が48時間を超えたハバナなどの地域では、住民が鍋をたたき、街角に積まれたごみを燃やす抗議が起きた。電力の回復時刻を予測できない状態は、猛暑の夜の睡眠や日中の仕事にも影響する。短時間の通電は一時的な救いにはなるが、燃料の安定供給と発電・送電設備の復旧がなければ、生活の見通しは立たない。

日本から確認できる情報の範囲

外務省のキューバ基礎データは、同国の主な輸入品に燃料を挙げ、米国の経済制裁や外貨不足の下で燃料・電力不足が生じていると説明している。ただし、資料の更新日は2025年2月で、2026年に起きた全国停電の回数や個別原因を検証したものではない。

日本政府が今回の停電を独自に技術検証した公的資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。年6回という集計、停電時間、住民生活への影響はAP通信の現地取材に、7月の電力網と燃料事情はAl Jazeeraなどの国際報道に依拠する。今後の回復を判断するには、キューバ当局による発電能力、燃料在庫、復旧工程の継続的な開示が要る。

よくある質問

キューバでは2026年に何回の全国停電が起きたのか
AP通信が8月初めに報じた時点で6回である。危機は続いており、その後の発生回数を含む確定値ではない。

停電が長引く主な背景は何か
米国の石油封鎖による輸入燃料の不足と、老朽化した発電・送電設備が重なっている。各要因の寄与を独立機関が切り分けた検証は確認できていない。

ハバナの住民はどう対応しているのか
短い通電時間に家事と充電を集中させ、小型発電機、太陽光パネル、充電式扇風機、薪による調理で停電時間をしのぐ例がある。費用や燃料が必要で、誰もが選べる対応ではない。