5歳児健診の全国展開に向け、自治体の実施体制づくりが進んでいる。こども家庭庁の実施状況では、5歳児健康診査支援事業を使った自治体が2023年度の59から2024年度の230へ増えた。ただし、この数字は補助事業の利用自治体数であり、全ての5歳児が健診を受けた割合ではない。健診の枠を広げても、その後の精密検査、相談、発達支援へつながらなければ、発達面の気づきは判定票の中で止まる。

実施義務があるのは1歳6か月児健診と3歳児健診

こども家庭庁は、母子保健法で市町村に実施義務がある健診を1歳6か月児健診と3歳児健診とし、3〜6か月児と9〜11か月児には地方交付税、1か月児と5歳児には国庫補助を措置している。5歳児健診は全国展開を目指す段階にあり、実施の有無、方式、対象月齢は居住する市区町村への確認が要る。

乳幼児健診は発達だけを調べる場ではない。こども家庭庁の母子健康手帳情報支援サイトは、医師、歯科医師、保健師、管理栄養士らが問診票と母子健康手帳を参照し、身体発育、栄養、運動や言語の発達を確認すると説明している。3歳児健診では視覚と聴覚も確認項目に入る。家庭での様子、健診会場での観察、身体診察を合わせて次の確認が必要かを判断する仕組みだ。

「要フォロー」は診断名ではない

5歳児健診で「要経過観察」「要紹介」「要精密」などの判定を受けても、発達障害や知的障害の診断が確定した意味にはならない。2024年3月の国通知は、健診後カンファレンスによる支援の判定を、専門医療機関が行う診断とは異なるものと明記し、必要な子どもを就学前までに保健、医療、福祉、教育の支援へつなぐよう自治体に求めた

判定が示すのは、追加の観察、相談、医学的評価のどれが必要かという入口である。一度の健診では、慣れない会場で力を出せない場合も、家庭では気づきにくい特徴が会場で見える場合もある。判定名だけで原因を決めず、どの所見を誰が、いつ再確認するのかまで聞き取る必要がある。

次の健診を待たずに受診する変化

頭を前に曲げて両腕を曲げる一瞬の動きを短時間に繰り返し、笑わなくなった、お座りが不安定になったなど、それまでの発達が後戻りした時は、定期健診の次回日程を待たずに小児科へ連絡する。こども家庭庁掲載の身体診察マニュアルは、この組み合わせを早急な脳波検査と医療機関への紹介が必要な所見に挙げている。けいれんが5分以上続く場合は、日本小児科学会の「こどもの救急」が示す通り救急車を呼ぶ

健診後は「次の担当者」まで決める

日本での基本的な流れは、日常の発達確認と乳幼児健診から、市区町村の保健相談、再確認または精密検査へ進み、必要に応じて小児科・専門医療、児童発達支援、保育・教育の支援へつなぐ形になる。全員が同じ検査、同じ通所支援へ進むわけではない。

日常の観察、乳幼児健診、専門的な評価、支援の調整、家族支援を矢印で結んだ図
段階その場で確認する記録次の窓口
健診結果の説明判定区分、具体的な所見、再確認する時期市区町村の母子保健担当、健診医
再確認・精密検査予約日、紹介先、紹介状や問診票の有無かかりつけ小児科、紹介された専門医療機関
専門診療の待機中相談日、家庭や園での具体的な様子、次回連絡日市区町村の事後相談、診断前支援
支援の開始後個別の目標、担当者、見直し時期児童発達支援センター、相談支援、市区町村

保育所、幼稚園、認定こども園での様子は、短い健診時間では見えない集団参加やコミュニケーションの手がかりになる。ただし、健診結果を園、医療機関、教育委員会などで共有する際は保護者の同意が前提となる。共有先、目的、渡す情報を確認し、同意した記録を残す。

診断前支援と児童発達支援は同じ手続きではない

専門医の予約日が先でも、支援を全て止める理由にはならない。2025年度改訂版の5歳児健康診査マニュアルは、専門医療の初診待ちが数か月となる場合が少なくないとし、自治体の事後相談、親子関係形成支援、療育教室、フォローアップ相談会などを診断前から使う体制を示している。未就学児の地域支援では、児童発達支援センターが中核となり、通所支援や保育所等訪問支援を担う。

一方、児童福祉法に基づく障害児通所支援には行政手続きがある。こども家庭庁は、保護者が市町村へ申請し、支給決定を受けた後に利用する事業所と契約する流れを示している。必要書類や相談支援の使い方は自治体で異なるため、健診の相談と通所支援の申請を一つの予約だと思い込まず、それぞれの担当課を確かめる。

こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、健康・生活、運動・感覚、認知・行動、言語・コミュニケーション、人間関係・社会性を見ながら、本人支援、家族支援、移行支援、地域連携を個々のニーズに合わせて組み立てるとしている。同じ判定を受けた子どもでも、支援目標と内容が同一になるとは限らない。

基礎疾患・医療的ケアがある子ども

慢性疾患、遺伝性疾患、聴覚・視覚の問題、医療的ケア、長期の服薬がある子どもは、一般の健診経路だけで完結させず、健診結果を主治医へ共有する。服薬や通院計画を健診判定だけで変えず、発達面の所見と基礎疾患の経過を主治医が合わせて確認する。集団会場の受診が難しい場合は、市区町村の母子保健担当へ個別健診や必要な配慮の有無を事前に問い合わせる。

追跡を途切れさせない六つの記録

  1. 健診票の判定名に加え、言語、運動、対人関係、生活動作など、指摘された所見を具体的に書き残す。
  2. 「様子を見る」で終えず、誰が、いつ、どこで再確認するのかを日付と担当窓口まで決める。
  3. 家庭では行動が起きた場面、頻度、続いた時間を記録し、「遅い」「困った子」といった評価語に置き換えない。
  4. 母子健康手帳、健診結果、紹介状、服薬情報をまとめ、園での記録を共有する場合は目的と同意の範囲を確認する。
  5. 専門診療の予約が先になる場合は、市区町村へ診断前の相談、親子教室、園への助言があるかを尋ねる。
  6. 障害児通所支援を検討する場合は、市町村への申請、支給決定、事業所との契約を別々の節目として追う。

全国展開で測るべきは健診後

健診の実施自治体数や受診者数だけでは、支援の断絶を捉えられない。5歳児健康診査マニュアルは精度管理の指標として、フォローアップ率、発見率、陽性的中率を挙げ、要紹介や要経過観察となった子どもの結果管理を求めている。判定後に精密検査を受けた割合、初診までの期間、診断前支援の利用、就学時の引き継ぎまで追って初めて、制度のつながり方が見える。

一方、健診判定後から専門診療の初診までの全国中央値や、支援が必要とされた子どものうち実際に支援開始へ至った割合を示す最新の公的集計は、本稿の執筆時点で確認できていない。5歳児健診の全国展開は入口の拡大であり、自治体間の待機期間、専門職の配置、診断前支援の差を同じ指標で公表できるかが次の課題となる。

よくある質問

健診で「要経過観察」なら発達障害なのか
診断ではない。健診の判定は、追加の観察や相談、専門的な評価が必要かを振り分ける入口であり、診断は専門医療機関の評価と区別される。

5歳児健診は全国どこでも受けられるのか
現時点では自治体ごとに異なる。1歳6か月児健診と3歳児健診には市町村の実施義務があるが、5歳児健診は国が補助して全国展開を進めている段階だ。居住する市区町村の母子保健担当へ確認する。

専門医の診断まで支援を待つ必要があるのか
全てを待つ必要はない。自治体の事後相談、親子向け支援、園への助言など、診断前から使う地域資源がある。障害児通所支援は市町村の支給決定を伴うため、診断前支援とは手続きを分けて確認する。