オーストラリア連邦政府は7月2日、「インタラクティブ・ギャンブル改正(ギャンブル改革)法案2026」(Interactive Gambling Amendment (Gambling Reform) Bill 2026)を連邦議会に提出した。政府案は午前6時から午後8時30分までのテレビ広告を毎時3本以内とし、その時間帯のスポーツ生中継ではギャンブル広告を禁じる

法案の規定は上院環境・通信法制委員会の審査に付され、8月17日が報告期限である。緑の党、保守連合、無所属議員から現行案の修正や全面禁止を求める声が出ており、政府が目指す2027年1月1日の施行も審議の進み方に左右される

広告枠を絞り、著名人とスポーツから切り離す政府案

テレビの毎時3本という上限は、午前6時から午後8時30分までに限られる。ラジオでは登校・下校の時間帯に広告を禁じる。選手、著名人、インフルエンサーを広告に起用する契約や、競技場と選手・審判のユニフォームに賭け事業者の広告を掲げる行為も規制対象となる。

オンライン広告は全面禁止ではない。配信先が登録済みアカウントで、利用者が18歳以上と確認され、広告を拒否する機会を与えられた場合に限って認める仕組みだ。これは広告を希望した人だけに見せるオプトインではなく、条件を満たした成人が拒否しなければ表示されるオプトアウトである。

屋外でスマートフォンのスポーツ賭博オッズ画面を見る人(イメージ)

全面禁止ではない──夜間の中継と競馬に例外

午後8時30分を過ぎると、スポーツ生中継でもハーフタイムや天候による中断中には広告を流せる。緑の党、保守連合、無所属議員に加え、労働党議員からも規制を強めるよう求める声が出た

競馬を主に扱う放送や出版物、競馬場にも例外が置かれる。テレビの本数、時間帯、出演者、表示場所を絞る法案であり、広告そのものをなくす案ではない。

8月17日の委員会報告後、修正協議へ

上院委員会への付託は法案成立を意味しない。委員会が審査するのは政府案の規定であり、法案が効力を持つには両院の可決と裁可が要る。8月9日時点では、最終条文も施行日も確定していない。

緑の党のサラ・ハンソン=ヤング(Sarah Hanson-Young)上院議員は、政府案では不十分だとして議会審査を要求した。労働党のルイーズ・ミラー=フロスト(Louise Miller-Frost)下院議員も、広告規制を前進と評価しつつ、全国規制機関と賭けを促す誘因の禁止を今後の課題に挙げた。政府案をそのまま通すか、対象時間や誘因規制を広げるかが委員会報告後の交渉点となる。

2023年マーフィー報告との隔たり

故ペタ・マーフィー(Peta Murphy)労働党下院議員が主導した2023年の報告書「勝つこともあれば、それ以上に負ける」(You Win Some, You Lose More)は31項目を勧告し、オンライン、テレビ、ラジオ、競技場、ユニフォームの広告を3年以内に段階的に全面禁止する案を示した

同報告は、ボーナスベットなど賭けの頻度や危険度を高める誘因への規制、全国的な危害低減戦略、独立したオンブズマンなども求めた。これに対し、政府法案の広告部分は露出の時間、回数、配信条件を制限する設計で、包括禁止を採らない。どこまでマーフィー報告へ近づけるかが、強化を求める議員と政府の隔たりである。

日本とは規制の出発点が異なる

日本で豪州案を読む際は、合法性の前提を分ける必要がある。警察庁は、海外で合法的に運営されるオンラインカジノでも日本国内から賭ければ犯罪になると説明し、2025年9月25日施行の改正法は、違法オンラインギャンブルのサイトやアプリを示す行為と、利用へ誘導する情報発信を禁じている

豪州法案は、国内で免許を受けた賭け事業者の広告も規制対象にする。日本の違法オンラインギャンブル広告を禁じる制度とは対象が一致しない。日本の競馬など合法な公営競技の広告まで含め、豪州法案と同じ区分でテレビ、ラジオ、オンライン、著名人起用を横断比較した公的資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。

よくある質問

豪州政府案はギャンブル広告の全面禁止なのか
全面禁止ではない。日中・夕方のテレビ広告を毎時3本以内とし、その時間帯のスポーツ生中継や、著名人の起用、競技場・ユニフォームへの表示を禁じる一方、夜間の中継休止時間や競馬専門媒体などには例外が残る。

法案はいつ施行されるのか
政府の目標は2027年1月1日だが、確定日ではない。上院委員会は2026年8月17日までに報告する予定で、その後も両院の審議と裁可が必要となる。

日本にも同じ広告規制があるのか
同じ制度ではない。日本では違法オンラインギャンブルへの広告・誘導が禁止され、海外運営のオンラインカジノも国内から利用すれば犯罪となる。豪州案は合法な免許事業者の広告を含めて時間帯や媒体を規制する。