果糖(Fructose)は主に肝臓で処理される単糖で、甘い清涼飲料水にはショ糖や異性化糖の一部として含まれる。代謝経路はブドウ糖と異なるが、その違いだけで一杯の飲料が病気を起こすとは判断できない。

日本で飲料を選ぶ際は、「半糖」「甘さ控えめ」といった呼び名より、1本または1杯の量、栄養成分表示、飲む頻度を先に見る。果糖の仕組み、人体研究の限界、国内表示制度の順に整理する。

すぐに受診が必要な状況

甘い飲料を多量に飲む状態が続き、急な強い口渇、多飲、多尿、全身の強いだるさ、腹痛、吐き気が重なった場合は、速やかに医療機関を受診する。呼びかけへの反応が鈍い、意識を失った、呼吸が苦しい場合は119番を要請する。国立健康危機管理研究機構の糖尿病情報センターは、清涼飲料水を1日に何Lも飲むことを契機に急性の高血糖や昏睡が起こる場合があり、口渇、多尿、倦怠感、腹痛、吐き気を警告症状として挙げている。これは通常の一杯で直ちに起きるという説明ではない。

飲料店のカウンターに並ぶ密封カップ入りの甘い飲料と糖量の表示板(イメージ)

代謝経路──果糖は主に肝臓へ向かう

ブドウ糖は全身の組織で利用され、血糖の上昇に応じてインスリン分泌を促す。果糖は主に肝臓へ取り込まれ、フルクトキナーゼでリン酸化される。2016年の医学総説は、果糖が解糖系の律速段階であるホスホフルクトキナーゼを経ず、脂質新生の材料へ流れやすい経路と、急速なリン酸化に伴うATP消費と尿酸生成を整理している

ショ糖はブドウ糖と果糖が一つずつ結合した二糖である。砂糖へ替えれば果糖がなくなるわけではない。異性化糖も果糖とブドウ糖を含むが、その比率は製品で異なるため、原材料名だけから一杯の果糖量を正確に計算するのは難しい。

果糖が急性のインスリン分泌を強く促さないことも、「血糖を気にせず飲める」という意味ではない。砂糖入り飲料にはブドウ糖も含まれ、総エネルギーの過剰は別に残る。糖尿病の治療中に飲料を替える場合は、自己判断で治療や食事計画を変えず、主治医か管理栄養士に確認する。

10週間試験が示した差と示していないこと

2009年の比較試験は、過体重または肥満の成人32人に、必要エネルギーの25%を果糖またはブドウ糖で甘味を付けた飲料から10週間取ってもらい、果糖群で内臓脂肪、脂質新生、食後中性脂肪が増え、インスリン感受性が低下したと報告した。ブドウ糖群では内臓脂肪ではなく皮下脂肪が増えた。

この試験は代謝差を調べるため、日常より高い糖負荷を使った。参加者数も少なく、果糖群の結果を市販飲料一杯へ換算する設計ではない。さらに、果糖を別の炭水化物と同じエネルギー量で置き換えた研究と、普段の食事へ追加した研究では結果がそろわない。日本動脈硬化学会の2022年版ガイドラインは、果糖を含む加工食品の過剰摂取が動脈硬化性疾患のリスクを高めうるとし、中性脂肪の低下を見込んで摂取を減らすよう推奨する一方、等エネルギー置換試験の結果は一貫しないと記している

糖尿病との関連──観察研究は因果を確定しない

2015年の前向き研究の系統レビューでは、含糖飲料が1日1サービング増える場合、2型糖尿病の発症率は肥満度の調整前で18%、調整後で13%高いという関連が示された。研究間のばらつきは大きく、飲料を多く取る人の食事、運動、社会経済状況を完全には分離できない。個人について「飲んだから発症した」と結論づける数字ではない。

機序と観察研究は別の証拠である。肝臓で脂質新生が進む経路が分かっても、実生活での発症は総エネルギー、体重、運動、遺伝的要因、ほかの食習慣の影響を受ける。飲料の種類を一つ替える行動だけで、病気の予防効果を保証する根拠にはならない。

日本の目安──WHO基準をどう使うか

世界保健機関(WHO)は、成人と子どもの遊離糖を総エネルギー摂取量の10%未満へ減らし、5%未満、1日約25gまで減らすと追加の健康上の利点があるという条件付き勧告を示している。遊離糖には、製造者や調理者、消費者が加えたブドウ糖、果糖、ショ糖に加え、蜂蜜、シロップ、果汁、濃縮果汁の糖が入る。

1日2000kcalなら10%は糖50g、5%は25gに相当する。ただし、個人の必要エネルギーは年齢、体格、活動量で変わる。25gは全員に一律の診療上の上限ではなく、飲料以外の菓子、調味料、果汁に含まれる遊離糖も合算する公衆衛生上の目安である。

日本には別の空白がある。厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で、日本食品標準成分表に添加糖や遊離糖の値がなく、国内の摂取量を把握しにくいため、糖類の基準設定を見送った。したがって、WHOの割合を日本の平均摂取量と直接比較する国内データは十分でない。

「無糖」「半糖」と栄養表示の読み方

包装済み飲料では、まず表示の単位を確認する。「100mL当たり」と「1本当たり」では数字の意味が変わる。炭水化物には糖類以外も含まれるため、炭水化物の値をそのまま添加糖の量とはみなせない。消費者庁によると、容器包装に入れられた一般用加工食品は熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量が義務表示である一方、糖質と糖類は任意表示である

「糖類ゼロ」と「砂糖不使用」も同じではない。前者は糖類の含有量が基準未満であることを示し、後者は糖類を加えていないことを示す。砂糖不使用でも原材料由来の糖質やエネルギーが残る場合がある。店頭で調製する飲料には、包装済み食品と同じ形で糖類量が必ず掲示されるわけではない。「半糖」が全糖の何%かも共通規格ではないため、事業者が1杯当たりの糖類または炭水化物を示している場合に、その数値を使う。

果物と果汁は分けて考える

WHOの遊離糖の定義は、新鮮な果物に元から含まれる糖を対象外とし、果汁の糖を対象に含める。果物は食物繊維を含み、かんで食べるため、甘い飲料と同じ量、同じ速度で摂取する食品ではない。「果糖を含む」という一点で、果物と清涼飲料水を同列に扱わない。

日常の選択では、水や無糖茶を水分補給の中心に置き、甘い飲料は量と頻度を決める。商品間を比べられる表示があるなら、100mL当たりの数字ではなく、実際に飲む1本または1杯の総量へ直す。大きい容器を選んで甘さだけ下げた場合、糖の総量が小さい容器より多くなることもある。

小児、妊娠中、持病や常用薬がある人

WHOの10%未満という目標は成人と子どもの双方を対象にするが、小児は必要エネルギーと飲料量が成人より小さい。成人向けの「1日25g」という換算値をそのまま当てはめず、家庭では水や無糖の飲み物を基本にする。急な口渇と多尿が続く場合は、甘い飲料で口渇をしのがず、小児科へ相談する。

妊娠中、糖尿病、脂質異常症、痛風、肝疾患、腎疾患がある人、血糖や尿酸へ影響する薬を使っている人は、一般向けの数値だけで食事計画を変えない。検査値、治療内容、必要エネルギーを踏まえ、主治医または管理栄養士と飲料の量を決める。

診察室で腹部超音波の画面を確認する医師と受診者(イメージ)

よくある質問

果糖はブドウ糖より危険なのか
代謝経路は異なる。高用量の比較試験では果糖群に内臓脂肪や食後中性脂肪の増加がみられたが、日常量で果糖だけが一律に危険だと順位付けする根拠にはならない。飲料全体の糖量と余分なエネルギーを確認する。

砂糖を使った飲料なら果糖を避けられるのか
避けられない。砂糖の主成分であるショ糖は、ブドウ糖と果糖が結合した糖である。異性化糖か砂糖かという名称だけでなく、1杯に含まれる糖の総量を見る。

「半糖」なら糖も正確に半分なのか
共通規格はない。店や商品ごとに基準が異なり、容器を大きくすれば総量が増える場合もある。1杯当たりの数値が掲示されていなければ、名称からグラム数を推定できない。

無糖飲料なら栄養成分表示を見なくてよいのか
「糖類ゼロ」「砂糖不使用」「無糖」の表示内容を区別する。牛乳、果汁、でんぷん質の具材など、原材料由来の炭水化物とエネルギーが残る商品もあるため、1本または1杯全体の表示を確認する。