たんぱく質の目安は、一つの体重換算式では決まらない。健康な成人には年齢・性別ごとの推奨量があり、運動量や加齢、腎機能によって参照すべき基準が変わる。

厚生労働省の基準を食事に落とし込み、運動者向けの国際的な数値と慢性腎臓病での境界を分けて整理する。先に確認したいのは、健康な成人向けの数値を腎臓病のある人へ、そのまま当てはめてはならない点だ。

早めの受診が必要な状況

健診で尿たんぱくが「1+」以上だった場合は、食事を変える前に医療機関を受診する。厚生労働省のe-ヘルスネットは、尿たんぱく陽性では慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)などが背景にある可能性があるため、受診を勧めている。1日の尿量が400mL以下まで減った、尿量の異常が続く、急に息苦しくなった、押した跡が残るむくみが広がった場合も、早急な受診が必要だ。日本腎臓学会は、1日400mL以下を乏尿とし、尿量の異常が続く場合は早めにかかりつけ医を受診するよう案内している

まな板に置かれた生の鶏むね肉とニンニク、香辛料(イメージ)

日本の成人基準──まず1日量を確認

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」は、たんぱく質の推奨量を18~64歳男性で1日65g、65歳以上男性で60g、18歳以上女性で50gとしている。これは健康な人を対象に、ほとんどの人が必要量を満たすと見込まれる量だ。健康な成人の公的基準を確認する際に、一律の体重換算式は使わない。

同じ基準は、総エネルギーに占めるたんぱく質の割合も示す。目標量は18~49歳で13~20%、50~64歳で14~20%、65歳以上で15~20%だ。推奨量のグラム数だけを満たしても、食事全体のエネルギーが不足すれば低栄養につながる。反対に、肉や補助食品を増やして穀類、野菜、果物が減れば、食物繊維やほかの栄養素が不足しうる。

日本で不足が一律に広がっているとも断定できない。2024年の国民健康・栄養調査では、20歳以上のたんぱく質摂取量は1日平均71.5gで、65~74歳は73.8g、75歳以上は71.3gだった。調査は平日1日の食事記録を基にした集団平均であり、個人が推奨量を満たした割合や三食の配分までは、この数値から分からない。

食品の量へ換算する

食品からの計算は、可食部100g当たりのたんぱく質量に、実際に食べる重量を掛ける。文部科学省の食品成分データベースでは、生の若鶏むね肉・皮なしは100g当たり23.3g木綿豆腐は100g当たり7.0g生の鶏卵は可食部100g当たり12.2gである。鶏むね肉を生の状態で80g使うなら約18.6g、木綿豆腐150gなら約10.5gになる。

調理で水分が減る食品は、同じ100gでも生と加熱後で成分値が変わる。市販品は商品ごとの栄養成分表示を優先し、表示された「1食」「1個」「100g」の単位と実際に食べた量をそろえて足す。肉、魚、卵、大豆製品、乳製品のどれか一つに偏らせず、主食や野菜を含む食事全体で確認する。

食卓に置かれた豆乳と卵の朝食(イメージ)

運動する人──体重1kg当たり1.4~2.0g

筋力トレーニングや持久系運動を継続する健康な成人は、一般向けの推奨量とは別の目安を使う。国際スポーツ栄養学会(International Society of Sports Nutrition)の2017年の立場声明は、運動する人の多くに体重1kg当たり1日1.4~2.0gを示している。体重60kgなら84~120g、80kgなら112~160gに相当する。

この範囲は健康で運動する人を対象にした国際学会の声明で、日本の公的な食事摂取基準ではない。同声明は1回の摂取量について、体重1kg当たり約0.25g、または20~40gを一般的な目安として示す。筋肉量の変化はトレーニング内容、摂取エネルギー、年齢にも左右されるため、量を増やすだけで筋肉が増えるとは限らない。

ジムのバーベルと栄養補助飲料の容器(イメージ)

高齢者──推奨量とエネルギー比を併せて見る

65歳以上の推奨量は男性60g、女性50gで、目標量は総エネルギーの15~20%だ。厚生労働省は、フレイル予防を目的とした量を一律に設定するのは難しいと説明している。食事量が落ちた人では、たんぱく質の割合だけを上げても必要なエネルギーを確保できない。体重減少や食欲低下、かむ力の低下がある場合は、量の計算より先に医師や管理栄養士が低栄養の有無を評価する。

高齢者では、腎機能低下とフレイルが同時にある場合の調整が難しい。腎臓を理由にたんぱく質を減らすと、筋肉量の維持に不利になる場合がある。反対に、フレイル対策として増量すればよいとも限らない。血液・尿検査、体重変化、食事量を合わせて判断する必要がある。

蒸し卵、白身魚、豆腐を盛り付けた柔らかい食事(イメージ)

慢性腎臓病──自己判断で減らさない

慢性腎臓病では、「腎臓が悪いなら全員が同じ低たんぱく食」という決め方は成り立たない。厚生労働省の食事摂取基準は、腎機能低下が進行するリスクが高い例で体重1kg当たり1日0.6~0.8gの制限を示す一方、75歳以上やサルコペニア、フレイルのリスクがある人を除外している。適用には腎機能、尿たんぱく、低栄養の評価が要る。

透析を始めた人は、保存期の制限量をそのまま続けない。透析方法や治療条件によって基準が変わるため、主治医と管理栄養士が決めた量を優先する。糖尿病、高血圧、心不全を併せ持つ人も、たんぱく質以外のエネルギー、塩分、カリウム、リンを含めた調整が必要になる。

野菜、少量の白身肉、ご飯を盛り付けた食事(イメージ)

高たんぱく食は腎臓を傷めるのか

厚生労働省の検討資料では、健康な成人を対象にした研究で、高たんぱく食が通常量の食事より腎機能を明確に低下させたとは確認されていない。その一方、研究の観察期間や評価項目に限界があるため、たんぱく質の耐容上限量は設定されていない。「上限がない」のではなく、安全な上限を数値で決める根拠が足りないという意味だ。

同じ資料は、筋力トレーニングによる除脂肪量の増加について、1日1.6g/kgを超えても上乗せ効果が小さい可能性を示している。必要量を超えて補助食品を足し続ける合理性は乏しい。腎機能の低下に気づいていない場合もあるため、健診で尿たんぱくや推算糸球体濾過量(eGFR)の異常を指摘された人は、増量を止めて受診する。

妊娠・授乳期、小児、持病がある人

日本人の食事摂取基準は、妊娠中期に1日5g、後期に25g、授乳期に20gを成人女性の推奨量へ加えている。妊娠初期の付加量は0gである。つわりや体重変化を含む個別の状態は別に評価する。小児は年齢区分ごとに基準が異なり、成人の体重換算式を使わない。

肝疾患、糖尿病、心不全、がん治療中の人、常用薬がある人、摂食障害の既往がある人は、病状や治療に応じた食事設計が要る。健康な成人や運動者向けの数値を自己判断で当てはめず、主治医または管理栄養士に確認する。

よくある質問

体重60kgなら、1日66gと計算すればよいのか
健康な日本の成人向け公的基準は、一律の「体重×1.1g」ではない。18~64歳男性は65g、65歳以上男性は60g、18歳以上女性は50gという推奨量から確認する。体重別の1.4~2.0g/kgは、健康で運動する人向けの国際学会の目安だ。

日本人はたんぱく質が不足しているのか
2024年調査の20歳以上平均は1日71.5gだった。ただし、平均値だけでは不足している人の割合、病気の有無、三食の配分は分からない。個人の食事記録と年齢・性別の基準を照合する必要がある。

プロテインを使わないと目標量に届かないのか
補助食品は必須ではない。肉、魚、卵、大豆製品、乳製品と主食に含まれる量を足し、食事だけで不足する場合に必要性を検討する。慢性腎臓病や治療中の病気がある人は、使用前に主治医や管理栄養士へ確認する。

三食へ均等に分けるべきか
運動者向けの声明は1回20~40gを一般的な目安としているが、全員に同じ配分が最適と証明されたわけではない。まず1日量と必要エネルギーを確保し、食欲や生活時間に合わせて無理のない配分にする。