ペルーで大統領の辞任や罷免が続くなか、ケイコ・フジモリ(Keiko Fujimori)氏が2026年7月28日、首都リマの国会で宣誓し、同国の大統領に就任した。51歳の保守政治家で、過去3回の敗北を経た4度目の立候補だった。6月の決選投票では左派のロベルト・サンチェス(Roberto Sanchez)氏を5万票未満の差で破った。新政権は政治の安定と治安回復を掲げるが、父アルベルト・フジモリ元大統領の統治をめぐる評価は今も社会を二分している。
4度目の挑戦、5万票未満の決着
ペルーの国家選挙審判所(JNE)は2026年大統領選の集計結果を確定し、ケイコ・フジモリ氏と副大統領候補2人を2026〜2031年の当選者として正式に宣言した。サンチェス氏は在外公館票の集計に不規則な点があったと訴えたが、選挙当局は異議を退けた。
フジモリ氏は7月28日の就任式で大統領としての職務を忠実に遂行すると宣誓した。ペルーでは過去10年、任期途中の辞任や議会による罷免が相次いだ。今回の就任で大統領は同期間に9人目となる。国民の直接選挙で選ばれたのは、そのうち3人にとどまる。
政権基盤──上院半数でも過半数には届かず
AP通信によると、フジモリ氏の大衆勢力党と主要な右派協力党は新設上院の半数を占める。野党が大統領罷免を進める際の壁になる一方、右派勢力は政権の政策を成立させるための過半数を確保していない。選挙結果が僅差だったこともあり、議会での協力形成が政権運営の焦点となる。
フジモリ氏はインフラ投資と経済成長も掲げる。ただし、就任時に最も前面へ出した課題は治安だった。恐喝や請負殺人が広がるなか、犯罪が深刻な地域では軍に治安作戦を一時的に主導させる方針を示した。社会政策の再編や最低賃金の15%引き上げにも言及しており、公約を予算と法案に落とし込めるかが次の段階になる。
父の政治的遺産が残す分断
ケイコ氏は、1990年代に政権を率いた故アルベルト・フジモリ元大統領の長女だ。父の支持者は、極左武装組織「センデロ・ルミノソ」の弱体化とハイパーインフレの収束を実績に挙げる。一方、元大統領は軍による人権侵害や汚職をめぐって有罪判決を受け、16年間服役した。2023年12月に釈放され、翌年9月に死去した。
アルジャジーラは、ケイコ氏が19歳で父の要請を受けて公的な役割に入り、長くペルー政治の中心にいたと伝える。就任前日には国家暴力の犠牲者遺族がリマで抗議し、批判側は治安対策が市民的自由を侵食する可能性を指摘した。2022〜2023年の反政府デモで死亡した50人をめぐり、野党は調査委員会の設置も求めている。
治安公約──エルサルバドル型の強硬策
フジモリ氏が選挙戦で示したのは、エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領が進めた政策を取り入れる構想だ。同国のテロリスト監禁センター(CECOT)をモデルにした巨大刑務所を建設し、刑事裁判を担当する裁判官の身元を伏せる制度を導入するとした。不法滞在者の国外退去や、受刑者に食費相当の労働を課す案も含む。
これらは選挙公約の段階にあり、法案の条文、対象となる犯罪、司法審査の仕組みは公表資料から判然としない。匿名裁判官は報復から司法関係者を守る狙いがある半面、被告が公正な裁判を受ける権利との調整が要る。巨大刑務所についても、収容人数の拡大と犯罪減少の因果関係、人権を守る監視体制を分けて検証する必要がある。
残る焦点
新政権の成否は、犯罪への即応と法の支配を両立させられるかにかかる。大衆勢力党が議会で大きな勢力を持つことは政権の安定材料となるが、過半数を欠く以上、主要法案には他党の協力が要る。僅差の選挙と地域間の支持の偏りを踏まえれば、強硬策を急ぐほど合意形成と透明な検証が重くなる。
対日関係については、就任演説やペルー政府の公表資料に基づく具体的な政策を本稿では確認していない。フジモリ氏の家族と日本とのつながりを、そのまま新政権の外交方針とみなす根拠はない。
よくある質問
ケイコ・フジモリ氏は何回目の大統領選で当選したのか
4回目である。過去3回は敗れ、2026年6月の決選投票でサンチェス氏を5万票未満の差で破った。
新政権は議会の過半数を確保しているのか
確保していない。大衆勢力党と主要な右派協力党を合わせて上院の半数を占めるが、政策を単独で成立させる過半数には届かない。
フジモリ氏が掲げる治安政策は何か
エルサルバドルをモデルにした巨大刑務所、刑事裁判を担う裁判官の匿名化、不法滞在者の国外退去、受刑者への労働義務などだ。制度の詳細と実施時期は本稿執筆時点で確認できていない。
出典・参考資料
- JNE proclamó resultados de elección presidencial de las Elecciones Generales 2026(Jurado Nacional de Elecciones)国家選挙審判所がケイコ・フジモリ氏を2026〜2031年の大統領当選者として正式に宣言した公表資料
- Keiko Fujimori is inaugurated as Peru’s president following a narrow election victory(AP News)就任、得票差、過去10年の大統領交代、上院の議席構成、治安公約、選挙異議と抗議を報じた記事
- Keiko Fujimori sworn in as Peru president after narrow election win(Al Jazeera)父アルベルト氏の政治的遺産と服役、治安公約、市民的自由をめぐる懸念を報じた記事