メモリー価格の上昇が、日本の自作PC部品と完成品PCの売り場に及んでいる。グラフィックスカード、メインメモリー、SSDは別の商品だが、上流ではDRAMやNANDフラッシュの生産配分と価格に結びつく。2026年後半にPCを新調するなら、店頭の値札だけで底値を決めつけず、部品ごとの価格履歴とメモリー契約価格を分けて確かめる必要がある。

日本の売り場で起きた値上がり

国内では年初から大幅な値動きが確認された。TBS NEWS DIGが取材した仙台市内のPC専門店では、一般的な8GBメモリーが2025年11月上旬の3980円から2026年1月に2万2800円へ上昇し、販売は1人1日4枚までに制限された。同じ記事でMM総研は、GIGAスクール向け端末の影響を除くと国内PCの平均単価が上がり続けていると説明している。

パソコンの基板上にあるプロセッサーと周辺部品の接写(イメージ)

ただし、個別店の値札は市場全体の指数ではない。AKIBA PC Hotline!が2026年5月16〜23日に秋葉原で調べた価格では、DDR5-4800の32GB×2枚組が前回比1万1480円高、DDR4-3200の32GB×2枚組が1万4200円高となった一方、一部のDDR5製品には特価による値下がりもあった。在庫のある店舗数や販促の終了だけでも最安値は動く。購入候補は製品名、容量、速度をそろえたうえで、複数店の価格履歴を比べる必要がある。

上流ではDRAMとNANDの上昇が継続

小売価格の先を読む材料になるのが、メモリーメーカーと機器メーカーが取引する契約価格だ。TrendForceは2026年第3四半期の一般DRAM契約価格を前四半期比13〜18%、NANDフラッシュを同10〜15%の上昇と予測している。上昇率は前四半期より鈍る見通しだが、値下がりへの転換ではない。同社はPCメーカーの在庫補充が続く一方、高い部品コストがノートPCの在庫を通じて小売価格へ順次反映されるとみる。

プリント基板に並ぶ電子部品の接写(イメージ)

グラフィックス用DRAMも同じ方向にある。TrendForceは、ノートPCの弱い需要がGDDR6とGDDR7の需要を抑えているものの、供給側が生産能力をほかの主力製品へ振り向けているため、GDDRの価格はDRAM全体の上昇基調に連動すると予測する。GPU本体の供給、為替、販売店の在庫も価格を左右するため、メモリー高だけで特定のグラフィックスカードの値上がり幅を説明するのは無理がある。

AI向けメモリーが生産配分を変える

供給が締まる理由は、AIサーバー向けの高帯域幅メモリー(High Bandwidth Memory、HBM)やサーバーDRAMへ生産資源が移っているためだ。TrendForce Newsが紹介した業界推計では、容量1GB当たりのウエハー等価使用量はHBMが一般DRAMの4倍、GDDR7が1.7倍で、AI関連需要は2026年の世界DRAM能力の2割近くに相当する。これは実際の生産実績ではなく、業界報道が置いた需要と換算係数に基づく推計である。

データセンターに並ぶサーバーラック(イメージ)

メーカー側の発信にも同じ構図が表れる。SK hynixの公式ニュースルームは、WSTSなどの予測を引用し、2026年のメモリー市場が30%成長し、一部予測では4400億ドルを超えると整理した。HBM3Eは同年のHBM出荷量の約3分の2を占める見通しだ。これはSK hynixの確定出荷計画ではなく、同社がまとめた市場予測として読むべき数字になる。

価格を見る三つの指標

第1は、購入候補そのものの国内価格履歴だ。グラフィックスカードならGPU名だけで比べず、搭載メモリー容量、冷却設計、保証をそろえる。ノートPCならメモリーとSSDの容量、画面、CPUを含む総額で比べる。店頭価格は為替、在庫、特価の影響を受けるため、1日の最安値だけでは趨勢を判定しにくい。

第2はDRAMとNANDの契約価格、第3は大手メーカーの供給計画だ。TrendForceの価格ページではDRAM、メモリーモジュール、GDDRの現物価格とDRAM契約価格を分けて掲載し、各系列の更新日時も示している。現物価格が短期の需給を映すのに対し、契約価格は完成品へ波及する上流コストを追う材料になる。供給計画では、工場建設の発表より量産開始と出荷能力の記述を確認したい。

クリーンルームで作業員がウエハーを持つ様子(イメージ)

待つか買うかを決める順序

故障の代替や仕事、学業で期限が決まっている場合、相場の反転だけを期待して購入を延ばす根拠は乏しい。用途に必要な性能と上限額を先に決め、候補の実売価格を比較する方が判断しやすい。期限がない場合は、一般DRAMとNANDの契約価格の上昇率が複数四半期にわたって縮小するか、PC向けの供給量が増えるかを追う余地がある。

先行きには幅がある。TechCrunchはSamsungの2026年第2四半期決算説明会を基に、供給逼迫が2027年に強まり、少なくとも2028年まで続くとの同社見通しを報じた。長期契約を結ぶ顧客を優先しやすい環境も示された。ただし、これは2026年7月時点の見通しであり、増産の進み方や消費者需要の減速で変わりうる。

回路基板上の黒いチップと電子部品の接写(イメージ)

よくある質問

メモリー高騰とグラフィックスカードの値上がりは同じ問題なのか
一部はつながっている。グラフィックスカードはGDDRを搭載するため、グラフィックス用DRAMの上昇は原価を押し上げる。ただしGPUの供給量、為替、製品別の在庫も価格を動かすため、値上がりの全てをメモリーで説明はできない。

現物価格と契約価格のどちらを見ればよいのか
目的が異なる。現物価格は短期の取引状況、契約価格はメーカー間の調達コストを追う材料になる。個人の購入判断では国内の実売価格を軸にし、契約価格を数カ月先の方向を考える補助線として使う。

古いDDR4なら安く買えるのか
規格が古いことは安さを保証しない。秋葉原の2026年5月後半の調査では複数のDDR4製品も上昇した。増設前にPCが対応する規格と最大容量を確認し、同一仕様の価格を比べる必要がある。