ChatGPT Healthは、本人が選んだ医療記録や健康アプリの情報をChatGPTに接続し、その内容を踏まえた回答を得るための消費者向け機能である。健診結果を生成AIに渡す場面では、回答の正しさとは別に、どの事業者がデータを受け取り、接続を誰が審査し、削除や問い合わせをどこが受け付けるのかを確認する必要がある。

OpenAIの案内によると、ChatGPT Healthは2026年7月から米国の18歳以上の利用者へ段階的に提供され、ウェブ版とiOS版に対応する。接続先はApple Health、米国の対応医療機関の患者ポータル、One Medical、Function Healthであり、日本の医療機関の記録を直接つなぐ機能は示されていない。日本の利用者が健診結果のPDFや画像を通常のチャットへ手動で送る行為は、この専用接続とは別のデータ経路になる。

スマートフォンに健康記録と受診情報の一覧を表示した画面(イメージ)

ChatGPT Health──接続と削除は利用者が管理

ChatGPT Healthでは、利用者が接続するアカウントを選び、医療記録を回答へ使う際の許可を管理する。接続した医療記録とApple Healthの情報、それを使った会話は基盤モデルの学習や広告に利用されず、アカウントの接続を解除すると同期済みデータはOpenAIのシステムから30日以内に削除される。ただし、会話履歴に取り込まれた情報は、その会話を削除するまで残る

ここで分けて見るべきなのが、サービスの安全設計と公的な審査である。OpenAIは保存時・通信時の暗号化や接続データへの追加保護を説明している。一方、これは事業者が公表した製品仕様であり、日本の行政機関が接続事業者を事前審査する枠組みではない。Health Privacy Noticeは、医療記録や検査結果などの収集目的、委託先への開示、利用者による削除請求の窓口を定めている。問題が起きた場合の第一の連絡先はOpenAIになる。

同機能は診療の代替でもない。OpenAIは、ChatGPT Healthを医療を支えるための機能と位置づけ、診断や治療を目的としないと明記している。データ接続に同意した事実は、個別の回答が医学的に検証済みであることを意味しない。

日本のマイナポータルAPI──接続前に国が審査

日本には、公的医療保険の情報を民間サービスへ連携する別の経路がある。デジタル庁の医療保険情報取得APIは、本人の同意にもとづき、診療情報、薬剤・処方・調剤情報、健診情報、医療費通知情報をマイナポータルから外部のAPI利用者へ提供する。利用者がファイルを取り出して別のサービスへ再投入する方法とは異なり、承認された事業者のシステムとマイナポータルが接続する。

接続事業者は自由にAPIを使えるわけではない。利用申請後にデジタル庁の審査を受け、開発、接続試験、本番動作確認、サービス提供前確認を経る。医療費通知を除く医療保険情報を扱う場合は、総務省、厚生労働省、経済産業省が定めたPHRサービス提供者向け基本指針の遵守も求められる。デジタル庁は、申請から提供開始までの参考期間を半年から1年としている。

サーバールームで情報セキュリティの文書を確認する担当者(イメージ)

個人情報保護委員会は、健診結果、診療記録、調剤録、薬剤服用歴などを要配慮個人情報に当たると説明している。日本側の制度は、本人同意だけで終わらず、接続主体と情報管理の条件を公的な規則で追える形だ。

審査が保証する範囲はデータ接続まで

もっとも、マイナポータルAPIの承認を「国がAIの回答精度を認証した」と読み替えるのは誤りである。公開されている審査の流れは、利用目的、API接続、本人同意、情報セキュリティ、サービス提供前の動作確認を扱う。連携先が生成AIで健診結果を説明する場合、その説明が医学的に正しいかを一件ずつ国が保証する制度ではない。

責任の見え方にも違いがある。ChatGPT Healthでは、接続、保存、回答、削除の主要な管理主体がOpenAIに集まる。マイナポータルAPIでは、国が接続を審査し、医療情報を渡した後のサービス運営はAPI利用事業者が担う。後者は公的審査の手順を確認しやすい反面、行政が個々の回答結果まで引き受ける構造ではない。

机に置かれた審査書類と情報管理の記録票(イメージ)

確認すべき三つの項目

医療データを扱うAIサービスを見る際は、まず接続方法を確認する。マイナポータルAPIとの正式なシステム連携なのか、利用者が取得したファイルを別サービスへ手動送信するのかで、データの経路と管理主体が変わる。

次に、同意の範囲と削除方法を見る。どのデータ項目を渡すのか、接続解除後に同期データと会話履歴がそれぞれどう扱われるのかは、同じ画面操作で完結するとは限らない。最後に、接続審査と回答精度の評価を区別する。公的APIの承認も、企業のセキュリティ審査も、生成された医療説明の正確性を自動的に裏づけるものではない。

診察室で医療従事者と患者がスマートフォンの健診結果を確認する様子(イメージ)

よくある質問

日本からChatGPT Healthに医療機関の記録を直接つなげられるのか
2026年8月9日時点のOpenAI公式案内では、対象は米国の18歳以上で、接続できる医療記録も米国の対応医療機関に限られる。日本の医療機関との直接接続は確認できていない。

マイナポータルAPIに対応したサービスなら、AIの説明も国が保証するのか
保証しない。デジタル庁の審査はAPIの利用目的や接続、情報の取扱いを確認する仕組みであり、生成AIが返す個々の説明に対する医学的な認証ではない。

接続を解除すればChatGPT Healthの情報はすべて消えるのか
同期済みの接続データは解除後30日以内に削除されるが、会話履歴に含まれた情報は会話自体を削除するまで残る。接続元と会話履歴は別々に管理する必要がある。