米国の管理下で売却されたベネズエラ産原油の収入について、口座残高と支出先を通覧できる政府報告は公表されていない。英紙フィナンシャル・タイムズは、2026年1月以降の輸出量と販売価格から、その価値を約130億ドルと推計した。これは米政府が確定した会計残高ではなく、報道機関による分析値である。

130億ドルは売却価値の推計

ドナルド・トランプ米大統領は7月27日、記者から約130億ドルの行方を問われ、ベネズエラでの軍事行動の費用を何倍も回収したとの趣旨を述べた。資金の行き先を重ねて問われると「国の運営に向かう」と答えたが、残高や受取先別の金額は示さなかった

大統領の説明と資金の法的な位置づけは分けて見る必要がある。約130億ドルは原油輸出の総価値を推計した数字で、米国の利益や使用済みの金額を表すものではない。売却手数料や輸送費、未回収代金を含む会計上の内訳も公開資料からは読み取れない。

原油を入れるドラム缶と石油施設(イメージ)

大統領令は「ベネズエラ政府の財産」と規定

1月9日の大統領令14373号は、原油などの売却代金をベネズエラ政府の財産とし、米国は財務省の指定口座で保管者として保持すると定めた。資金の差し押さえを禁じ、国務長官が決める公的、政府的、外交的な目的のために財務長官が送金や支出の指示に従う仕組みだ。

最初の資金は米国外に置かれた。米議会議員が3月に公表した書簡によると、ルビオ国務長官は1月28日の証言で、最初の売却代金5億ドルをカタールの銀行口座へ入れ、3億ドルをベネズエラ政府の公務員給与に送ったと説明した。残る2億ドルは短期口座から米財務省の口座へ移すとしていた。

書簡は、カタール口座が閉鎖されたか、米国側の口座残高はいくらか、追加支出の受取先と目的は何か、外部監査制度が始まったかを財務長官に尋ねた。大統領令には議会への定期報告を認める規定があるものの、一般の読者が全取引を照合できる公開台帳を義務づけた条文はない。

民主、共和両党から開示要求

資金管理への疑問は党派をまたぐ。民主党のホアキン・カストロ下院議員は透明性と安全策の欠如を批判し、共和党のマリア・エルビラ・サラサール下院議員も資金の行き先を完全に開示するよう求めた

米連邦議会議事堂の外観(イメージ)

監査を実施しているとの政府側の説明が事実でも、監査法人の契約範囲、対象口座、検証済みの支出、指摘事項を記した報告書が公開されなければ、第三者は約130億ドルという輸出推計と実際の入出金を照合できない。焦点は、資金が消えたとの断定ではなく、政府の主張を裏づける資料がどこまで開示されるかにある。

日本から確認できる情報の範囲

外務省の基礎データは、ベネズエラが世界有数の産油国で、経済が石油収入に大きく依存すると説明している。日本の読者にとっても、今回の問題は米国の会計管理にとどまらず、ベネズエラの政府財政と生活基盤に関わる。

一方、日本政府が米国管理口座の残高や監査結果を独自に検証した公的資料は、本稿の執筆時点で確認できていない。資金の全体像を判断するには、米財務省と国務省による残高、支出明細、監査報告の公表を待つ必要がある。

よくある質問

約130億ドルは米政府の公式残高か
違う。フィナンシャル・タイムズが輸出量と販売価格から算出した推計で、米政府が公表した確定残高ではない。

売却代金は米国の財産になったのか
大統領令14373号はベネズエラ政府の財産と定め、米国は保管者として保持するとしている。トランプ氏の政治的な発言と法的な帰属は一致しない。

何がまだ分からないのか
米国側の最新残高、支出先別の金額、監査法人の契約範囲、公開済み支出を超える送金の有無が、一つの公的報告では確認できない。